【株式投資のコツ】景気サイクルから投資銘柄を決めよう!

株価は景気の影響を大きく受けています。今回は、景気サイクルから投資銘柄を選定する方法をご案内します。そのためには、景気を判断するための指標もチェックしておく必要があります。まずは、景気サイクルはどのようになっているのかを見ていきましょう。

景気サイクルとは

株式市場は、それを取り巻く経済環境に大きな影響を受けます。特に景気と為替の動きはとても重要で、株価トレンドが決定付けられてしまうことも多くあります。株価を動かす最大の要因は業績ですが、マクロの視点で考えると、株価は景気変動に影響を受けている面も大きいのです。

景気が悪化していく過程では業績も悪くなりますし、景気が回復していく過程では業績も改善しやすくなります。通常、株式は景気に影響を受け、景気拡大期に大きく上昇し、景気後退期に下落するというサイクルを繰り返しているのです。それでは、そもそも景気とは何なのかを見ていきましょう。

景気とは

景気とは、「経済活動全般の動向」を表しています。つまり商売がうまくいっているかどうかということです。景気がいいとは商売がうまくいっていることで「好景気」、逆に商売がうまくいってないと景気が悪いということで「不景気」と呼ばれています。

景気には大体の周期があります。拡大期が2~3年。後退期が1~2年、合計3~5年で1回転というのが平均的な周期です。 このサイクルの周期は

好況→後退→不況→回復

というふうに続きます。ただし経済は生き物ですから、状況によっては景気拡大期が5年以上続いたり、景気後退が3年以上続いたりすることもあります。しかし、平均的な周期を把握しておけば、景気転換点に関して大まかな目処をつけることが可能になります。

例えば、周期的にそろそろ景気が底打ちするのではないかという時期に、経済指標などによって景気回復の兆しが出てくれば、投資チャンスと判断することができますし、逆に周期的にそろそろ天井が近そうだという時に、景気悪化の経済指標が出てくれば、少し慎重なスタンスに変更した方が良いと判断することができるわけです。

株価は景気に対して半年ほど先行して動くといわれています。 ですから、経済指標で足元の景気を確認しながら、景気が来年末まで拡大すると読めば 、株価は来年の夏頃までは上昇が続くのではないかといった判断をすることができます。

景気や株価は、「山高ければ谷深し」ともいわれています。これは、景気が拡大して株価が大きく上昇すると、その後の景気後退退局面では、景気の谷がかなり深くなるという意味です。

景気の山と谷は内閣府に「景気動向指数研究会」が設置されており、そこで景気の山と谷の判断がされています。ただし、山や谷の決定に関しては1年以上経過してから同研究会で判断されるので、注意が必要です。

現在は2012年に始まったアベノミクスの影響もあり、景気拡大はバブル景気を超え、戦後最長の長期景気拡大期に入っています。 企業収益が過去最高となる中で、雇用と所得の環境も改善し、所得の増加が消費や投資の拡大につながるという、経済の好循環続いていると分析されています。しかし、米中貿易摩擦や新興国通貨安など、国際経済においては不安要素も出ています。好調な米国経済が腰折れすれば、日本の景気にも悪影響を与える恐れがあるので、注意が必要です。

出典:時事ドットコム

景気を判断する指標

景気の状態を判断する時に、主観やイメージでいっても意味がありません。客観的な指標で判断するべきです。景気そのものの動きは、経済指標によって確認することができます。経済指標は、ヒト・モノ・カネの動きを数値で表して、経済の動きを捉えようとするものです。

一般に、景気判断で使われる 指標には次の三つがあります。

 

① GDP (国内総生産)

②景気動向指数

③日銀短観

 

それぞれの指標を見ていきましょう。

①GDPは国の経済活動を総合的に把握する指標

GDP(Gross Domestic Product:国内総生産)は、一国の経済力を知るための基本的な指標です。GDPは国の経済力を表し、各国のGDPを比較することが可能です。GDPは、「ある国におけるすべての経済活動で一定期間に算出された付加価値の総額」と定義されています。

付加価値とは、商品の生産段階で新たに生み出された価値のことで、いわゆる「儲け」です。例えば、500円で仕入れたものを1,500円で売れば、1,000円の儲けが出ます。この1,000円のことを「付加価値」というのです。

GDPには、「名目GDP」と「実質GDP」の2種類があります。名目GDPは、実際に取引された価格に基づいて推定された値です。一方、実質GDPは、名目GDPから物価変動分を取り除いた値のことです。 2017年、各国の名目GDPを比較すると以下のようになります。

単位:10憶USドル
1 米国 19,485.40
2 中国 12,014.61
3 日本 4,873.20
4 ドイツ 3,700.61
5 イギリス 2,628.41
6 インド 2,602.31
7 フランス 2,587.68
8 ブラジル 2,055.14
9 イタリア 1,938.68
10 カナダ 1,653.04

日本は長らく世界第2位の経済大国と言われていましたが、2010年に中国に名目GDPで抜かれ、42年間にわたって保ってきた世界第2位の経済大国の地位を中国に譲りました。現在では、2倍以上の差をつけられています。

GDP では民間需要の中に民間最終消費支出という項目がありますが、これが個人消費を表しています。個人消費は名目 GDPの60%弱を占めていることから日本経済への影響力は極めて大きいのです。

②景気動向指数

景気動向指数は、景気に関する総合的な指標です。経済活動は生産・消費・雇用など様々ありますが、必ずしも全てが同じ方向に向いているわけではありません。

景気動向指数は、そうした経済活動に関する指標を統合することで、景気の現状を把握したり将来の予測を行ったりするために作成されます。

景気動向指数には、DI(ディフュージョン・インデックス)CI(コンポジット・インデックス)の二つの種類があります。

ディフュージョン・インデックス(DI)は、景気の変化の方向を示す指標です。採用系列指標の各月の係数を3ヶ月前と比較して、改善している指標の割合を計算して算出します。 DI は景気拡張局面では50%を上回り、景気後退局面では下回る傾向にあります。

DI は、景気の変化の方向性を示す指標であり、変動の大きさを示すものではありません。また月々の DI にはブレがあるため、一般的には3ヶ月連続で50%の上下にあるかどうかで判断されます。

コンポジット・インデックス(CI)は、景気拡大や後退の速度や程度を表すように作られています。DI を見ても景気がどの程度を良くなっているのか、悪くなっているのか判断することはできません。

その点をカバーしているのがCIです。 CI は、景気の山の高さや谷の深さ、景気局面の勢いを把握することができます。

DIとCIそれぞれについて、景気動向に先行する先行指数と、景気動向と同時に動く一致指数、景気に遅れて動く遅行指数の3つがあります。

 

1.先行指数 TOPIX(東証株価指数)、最終需要在庫率など

景気に数ヶ月先行するため、景気の先行きを予測する上で重要な指標です。

2.一致指数 有効求人倍率、鉱工業生産指数など

景気の現状を把握するのに利用できます。一番重要な指数です。

3.遅行指数 完全失業率、家計消費支出など

一致指数より数ヶ月から半年程度遅れる事後的な指数であり、重要度は低いと言えます。

 

景気動向指数は、内閣府から毎月発表されています。かつては DI が使用されていましたが、2008年4月以降はCIの方へ移行されました 。

③日銀短観

正式名称を「全国企業短期経済観測調査」といいます。全国の企業動向を正確に把握し、金融政策の適切な運営のための調査を行っています。金融市場や為替市場での注目度が高い統計の一つです。全国の約1万社の企業を対象に3ヶ月ごとに実施しています。

業種別(製造業・非製造業など)と企業規模別(大企業・中小企業など)に分けて、企業経営者に自社の経営環境に関してアンケートを行います。状況について「良い」「さほどよくない」「悪い」の三つで回答します。

状況が良いと答えた企業の割合から、悪いと答えた企業の割合を引いた数値を業況判断DI(Diffusion Index)といいます。業況判断 DI では3ヶ月後の見通しも同時に調査しています。特に大企業製造業の DI は注目度が高いです。

景気を判断するための商品市況

経済指標は、毎月発表されるものや、3ヶ月ごとに発表されるものですが、景気の動きを反映しながら毎日動いている指標もあります。それは「商品市況」です。

商品市況とは、農産物や原油、金、鉄、半導体などモノを作る原料や材料となるものの値段のことです。また海運指数なども日々変動する商品指標の一つです。景気を先取りする指標としては、主に原油・海運・非鉄金属・半導体があります。それぞれ見ていきましょう。

原油

原油価格は、資源関連株に影響を与えます。原油先物など国際指標が悪化すると、収益が圧迫されるからです。資源関連株は景気動向に左右されやすく、特に中国景気の減速をめぐる不透明感が重荷になっています。

商品指標の中で、最も影響力が大きいのが原油価格です。景気動向や、株式市場にも大きな影響を与えるので、原油価格はチェックしておきましょう。米国のWTI原油先物が指標として使われるのが一般的です。以下は、WTI原油先物のチャートです。

出典:楽天証券

バルチック海運指数

海運指標しては、バルチック海運指数が景気先行指標として注目されます。イギリスのロンドンにあるバルチック海運取引所が算出・公表する外航不定期船の運賃の総合指数をいいます。

毎営業日のロンドン時間13時(日本時間22時サマータイム期間は21時)に公表されており、国際的な海上運賃の指標となっています。

バルチック海運指数は、世界経済や商品市況の先行指標とされています。その変動要因としては、海上の荷動き量の他に、船舶の沖での待ち受け、積み下ろしのためのインフラの混雑状況、ハリケーン等の気象情報などがあります。

また株式市場でも注目されており、実際に海運会社の業績の先行きを判断する材料にもなるため、海運株の株価は同指数に連動しやすい傾向にあります。バルチック海運指数の値動きは以下のようになります。

出典:bloomberg

非鉄金属

非鉄金属としては、アルミ・ニッケル・銅・亜鉛の値動きが景気先行指標として注目されます。特に銅は注目度が高いです。

銅価格は、2018年下期になっても国際価格は軟調です。指標となるロンドン金属取引所(LME) の3か月先物価格は11月中旬時点で1トン6,200ドル前後と上値が重い展開になっています。

6,000ドルを割り込んだ10月下旬に比べれば3パーセンほど高い水準にありますが、戻りの勢いは鈍いです。銅価格にも、米中貿易摩擦に伴う景気悪化懸念が影響をしています。

半導体

半導体の場合は色々な種類がありますが、その中で最も汎用度が高いのがDRAM という製品価格です。最近は液晶ディスプレイの需要が世界的に増えているので、その市況も景気を占う上での注目度が立っています。

DRAMは、記憶機能を持つ半導体メモリの代表品種です。コンピューターのメインメモリなどに広く使われています。データの書き込みと読み出しが準備できるメモリを RAM( ランダムアクセスメモリー)と呼び、DRAMは記憶内容を保存するために再生作業を繰り返す必要があります。

投資銘柄として景気敏感株を売買する

景気サイクルに注目した投資戦略として、商品市況や景気指標を見ながら、景気敏感株を売買するというのがあります。

景気敏感株とは、景気動向によって業績が大きく変動する銘柄のことです。景気循環株と呼ぶこともあります。素材産業や工作機械などの設備投資関連などの銘柄が該当します。業種では、先ほどご案内した海運、非鉄、半導体の他に、化学、鉄鋼、機械、電気などの株も景気敏感株です。

景気敏感株の特徴は、業績をだいぶ先取りして動くことです。業績悪化が続く中で、株価は底打ちしてぐんぐん上昇し、業績改善がはっきりしてきた時には、すでに株価が底値から2~3倍になっていることもあります。

逆に、業績が上方修正されても株価は天井付けて急落し、業績が悪化した時には、高値から半値以下になっているケースもあります。

PERやPBRなどのファンダメンタルズ分析で売買する手法は通じづらく、場合によっては裏目に出てしまう可能性もあります。ですから、テクニカル分析を使うことをおすすめします。

株価チャートが上向いてきたら買いを入れ、崩れてきたら売りを考えることです。まず、株価チャートが下降トレンドの場合の買いは避けた方が無難です。

株価の下げ止まりが確認された後、日足でしたら25日移動平均線や75日移動平均線。週足でしたら13週移動平均線や26週移動平均線が横ばいになってから上向いたときに買いを考えます。

まずはチャートを確認した上で、個々の業績ではなく商品市況や景気の動きを買いシグナルとして使います。特に商品市況は先行して動く傾向があるので、株式市場が悪い時にバルチック海運指数や、DRAM、銅価格などが急上昇してきたら、景気底打ちのシグナルになる可能性があります。

逆に株式市場が絶好調の中で、品市況や景気指標が下がってきたら、危険シグナルになります。

さらに景気敏感株の中でも値動きは異なります。一般的には上位2~3社が先行して動き出し、しばらくしてから中位や下位の銘柄が動き出す傾向にあります。景気が回復すれば、景気敏感株はほぼ全般的に大きく値上がりするので、出遅れている業種か3番手以下の銘柄を狙っていくというのも有効な戦略です 。

まとめ

今回は、景気サイクルから銘柄を選定する方法を解説してきました。景気は、一般的に5年周期で動いています。不況から景気が回復してきた時に株価が大きく上昇する銘柄が増えてきます。不況時に新しい商品やサービスを生み出した企業こそ、次の景気回復期のスター株になるのです。

ですから、景気が悪い時でも次のスター株は何になるのかといったことを分析する必要があります。景気を判断する指標には様々なものがありますが 、GDP・ 景気動向指数・日銀短観の三つは確実に抑えておきましょう。

そして、景気回復に大幅に上昇する業種である景気敏感株も把握しておく必要があります。株価は景気に大きな影響を受けています。この記事が、景気サイクルから投資チャンスを得られるきっかけになれば幸いです。

 

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