アパートローンの借り換えを行うことで、金利が下がって総返済額が人によっては100万円~1,000万円安くなったと聞きます。
アパートローンの借り換えは、みんな普通にやっている?
アパートローンの借り換えはするべき?
などと、現在アパートローンを組んで数年経った人は、借り換えるべきかどうかを疑問に思っているところでしょう。もし、確実に金利を下げることが可能であれば考えたいものです。
実際には、状況によって借り換えが難しい人や、逆に返済額が高くなってしまう可能性もあります。
今回はアパートローン借り換えのメリットとデメリットを確認しながら、手続き方法や注意点、必要な書類のなどを解説していきます。
アパートローンの借り換えとは
アパート経営にかかる費用の中で、実は一番大きいとも言われる金利負担は、収益率を低下させる原因の1つでもあります。
借入額や金利の利率によっては、年間で数百万円に上る場合もあるのです。
金利負担を減らすことができれば、経済的にも精神的にも余裕が出て嬉しいのですが、まさにこの金利負担を下げるために行われているのが「アパートローンの借り換え」です。
借り換えの仕組みは?
でも、この「アパートローンの借り換え」とは、そもそも、何をすることなのでしょう。借り換えの仕組みをご説明する前に、まずはアパートローンだけに限らず、ローンの返済額を減らすためにどのような方法があるのかを見ておきましょう。
ローン返済額を減らす方法
返済額を減らす方法は、
- 繰り上げ返済
- ローンの借り換え
- 条件、金利の変更
以上3つの方法があります。この中で、最も効果が高く比較的に誰にでも取り組みやすいのが「アパートローンの借り換え」になります。
借り換えの流れ
借り換えは、現在よりも条件のいい新しいローンを主に不動産を担保にして借入し、既存のローンの返済を完済して、新しい条件のいいローンの返済を始めるという流れになります。
現在のアパートローン
→不動産を購入するために組んだローン→返済額を減らしたい
新しいローン
→現在のローンを終了させるために返済額を借入する→現在のローンを完済する
というように、必然的に新しいローンは、現在のローンよりも金利が下がり月々の返済額、トータルの返済額が少なくなるものが最低条件となります。
アパートローン借り換えのメリット
では、アパートローン借り換えのメリットをご紹介していきます。
利回りが向上する
実際の収益額は、実質利回りとして計算していくことができます。
実質利回りは、
(年間の家賃収入-年間の諸経費)÷(物件価格+購入にかかるその他費用)
で算出することができるのですが、条件のいいアパートローンに借り換えを行うことで、金利や返済額が減少したとします。そうすると、年間の諸経費の総額も減少することで利回り率を向上させることが可能となるのです。
※中には返済総額が大幅に減少することを利用して、新たに不動産を購入する人もいます。
信用度が向上する
アパートローンの借り換えを行うことによって、既存のローンは基本的に完済することになります。
完済履歴が1つ加わることで、信用できる実績を作ることにつながります。さらに、新たなローンが組めた、借り換えが実行できたという事実も、信用度を高めるプラスの要素となっていきます。
特に、借り換え先の金融機関がメガバンクなど審査の厳しいところであれば効果的です。
有利な条件交渉が可能
ローンの借り換えは、必ずしなければならないわけではありません。
条件が良ければ借り換えを考える、
といった余裕を相手に見せることができます。借り換え先の金融機関にとっては、新規の利用者を獲得できるかどうかが交渉次第となります。
その条件であれば借り換えはしない、
と決断することも可能ですから、強気な交渉が可能となるのです。特に金額が大口であれば、有利な条件で交渉できるケースも多くなります。
返済方法の見直しができる
借り換えを行うメリットとしては、返済方法を見直すことができる点にもあります。
変動金利から固定金利、特約型、選択型など既存のローンにはなかった金利の種類に変更することで、今後の金利リスクを抑えることができます。
仮に、返済金額があまり変わらないとしても、金利を下げてなおかつ借入期間を延長することで、毎月の返済額を抑えていくことが可能です。
※例えば教育ローンや出産などで、新たな支出を予定している人などは、返済方法を見直すことで全体の支出のバランスを考えていくことが可能になります。
借り換え成功事例
返済額の例
既存ローン(金融機関A)
収益物件の入手にあたって5,000万円の融資を受けています。
借入残高:2,000万円
金利:2.0%
このまま支払い続けた場合の返済総額は約2,543万円だとします。
新しいローン(金融機関B)
借り換えを行い2,000万円の融資を受けます。→既存ローンAを完済します。
借入残高:2,000万円
金利:1.0%
支払い総額はに変わり、差額を計算すると、
2,543万円-2,261万円=282万円→282万円お得になります!
収益額の例
既存ローンでの年間の手取りの収益額は100万円だっととします。ローンの借り換えを行い、金利が低くなったことで年間の返済額が減少して、手取りの収益額は110万円になりました。
この場合、アパートローンの借り換えを行ったことで、年間でプラス10万円に収益額が高くなったことになります。仮にこの後の返済期間が10年残っていたとすれば、10年間で100万円の差額が生じることになります。
アパートローン借り換えのデメリット
それでは、次にアパートローンのデメリットとは一体何なのでしょうか。
違約金がかかる場合がある
既存のアパートローンの金利の種類や契約内容によっては、繰り上げ返済に対して違約金がかかる場合があります。
特に固定金利で一定期間の金利が定められている場合には違約金がかかるケースが多くなります。借入額や金利によって違約金の額もそれぞれ異なりますが、内容によっては数百万円かかる場合があるので、よほど大きな差額が見込めない限りは借り換えを行うメリットはないと言えます。
手数料や諸経費がかかる
司法書士費用
抵当権抹消・設定、登録免許税などの手数料がかかります。
返済事務手数料
既存のローンを完済させるための手数料がかかります。
新規事務手数料
借り換え先での事務手数料が新たにかかります。
その他諸費用
これらの費用を差し引いた上で、借り換えのメリットがあるかどうかを検討することが大切です。
返済額が増えることもある
いくら金利が下がったとしても、融資期間が長くなることでトータルの返済額が現状よりも増えてしまう可能性もあります。
また、変動金利の場合は急激な金利変動によって、将来的に金利が現状よりも高くなってしまう可能性があることも考慮しておく必要があります。融資期間や金利の差額などは余裕を持って計算しておくことが必要です。
必ず審査に通るわけではない
借り換えをする人の中には、空室率が高い、返済が滞っている、などネガティブな要素によってローンの借り換えを行う場合には、審査の際に返済能力が低いと判断されて審査に通らない事もあります。
空室率が高いということは、賃貸ニーズが低いことを証明することでもあり、それが不動産の価値を下げてしまいます。
返済が滞っている場合も返済能力だけでなく、不動産投資というスキル的な面からも運営能力が低いと判断されてしまいます。
借り換え失敗事例
手数料・違約金の例
司法書士費用15万円
返済手数料、違約金:220万円
事務手数料:30万円
合計:265万円
仮に、返済総額が300万円安くできたとしても、300-265=35万円
融資期間が10年間だとすれば、35÷10=3.5 年間で3万5千円となります。もし、変動金利にて金利が上がってしまえば赤字になる可能性があります。
借り換えをするべきかを判断する方法
以上のように、借り換えには大きなメリットが期待できると同時に隠れたリスクもあるのです。
契約内容の確認
シュミレーションをしていくにあたって必要なのが、既存のアパートローンの契約内容を確認しておくことです。
-
- 借入残高
- 融資期間→あと何年残っているのか
- 毎月の返済額
- 金利
- 金利の種類→特約などの期間
- 違約金→繰り上げ完済した際に違約金はかかるのか
- 手数料
などが事前にわかっていれば、より正確な趣味レーションを行うことができます。
借り換えシュミレーションサイト
アパートローン借り換えシュミレーションができるサイトは、
※三井住友トラストL&F 返済シュミレーション
※みずほ銀行ローンシュミレーション
※全国銀行協会 ローン借り換えシュミレーション
判断する上でのチェックポイント
- 申し込み先の金融機関の対象となるか(条件やエリアなど)
- ローンの残りの返済期間は法的耐用年数を超えていないか
- 融資期間の上限内で返済は可能か
- ローン残高が担保評価の範囲内か
- 申し込み先の金融機関の担保評価法
- 直近1年内で延滞や未払いはないか
- 各種税金の支払い状況
- 連帯保証人が必要か、用意できるか
- 団体信用生命保険に加入できるか
- 収益物件以外に収入や金融資産はあるか
以上は最低限抑えておきたい項目になります。これらをしっかり確認した上で、既存のローンよりもハードルの高い低金利ローンへの申し込みを検討していきましょう。
※応用編として、
既存のローンの金融機関に金利交渉をしてみることもできます。他行への借り換えを検討している旨を伝えて、条件(かなり強気に!)によっては継続する意思があることを相談することで、交渉が成功する場合もあります。
あえて、ライバル意識を駆り立てるような他行(嘘でもいいので)を例に挙げると効果的です。
アパートローン借り換えの手順
希望に合ったアパートローンの借り換え先が決まったら、借り換えの手順を理解しておき、無駄な利息の支払いを少しでも減らせるように、迅速に進めていきましょう。
大まかな流れ
①現状の再確認
もう一度、既存のローンの契約内容を確認します。見落としている部分はないか、違約金は発生しないかなど。
②繰り上げ返済の方法を確認
あくまでも検討段階である事を伝えて、既存のローンの金融機関に、もし繰り上げ返済で完済する場合にどのような手順ですればいいのかを確認しておきます。手続きにかかる日数や費用の概算、必要書類なども確認しておきます。
※この段階で向こうから、条件の見直しを提案してくる場合もあります。引き留めに合うのを避けたい場合はぎりぎりまで、伝えない方がいいでしょう。
③候補の金融機関を絞る
繰り上げ返済のだいたいの流れが把握できたら、最終的な候補を2,3に絞ります。
④借り換え先の金融機関に申し込みをします
審査が通るまでに時間がかかるので、日数的に余裕をみて、かつ迅速に進めていきましょう。
⑤アパートローンの借り換えを実行する
審査結果に応じて、一番条件のいい金融機関に借り換え先を決定し、契約に移ります。
⑥既存のローンの完済手続きをする
借り換え先が決まった時点で、既存のローンの繰り上げ返済の手続きを進めていきます。
借り換えに必要な書類
借り換えに必要な書類は2種類あります。
「既存のローンの完済時に必要な書類」と「借り換え先の申し込み時や手続きで必要な書類」です。
借り換え先に必要な慮類
個人情報
身分証、銀行口座情報など
物件情報
収益不動産の情報をファイルにまとめておきましょう。
住所、建物の構造、図面、築年数などの詳細など、細かい情報を揃えておいた方が有利です。
売買契約書
頭金、借入額、購入金額、売買価格など
重要事項説明書
売買契約書と一緒に不動産会社から受け取る書類で、物件の土地・建物面積に関する情報が記載されてあります。
登記簿謄本・公図
登記簿謄本は法務局で1通600円で入手できます。土地用と建物用とそれぞれ必要です。
レントロール
物件の家賃や空室状況、利回りがわかる資料
源泉徴収票
年収が証明できるもの
確定申告書
支出入の証明や、経営能力を判断するための書類
返済予定表
既存のローンの借入額や金利、月々の支払い額を表記したもの
資産を証明できる書類
各種証券や現物の資産などが証明できる書類
職務経歴書
最終学歴や職務経歴をまとめた資料
※各金融機関によって、必要となる書類は若干異なりますが、以上の書類がいつでも用意できるように準備しおくと安心です。
完済時に必要な書類
-
- 返済用預金口座情報
- 全額繰り上げ返済依頼書
- 火災保険の質権消滅手続き書(借り入れ先による)
- 抵当権抹消手続きに関する書類
完済時に必要な書類は、金融機関によって窓口、あるいは郵送にて入手することが可能です。
抵当権抹消手続きの流れ
完済手続きをするにあたって、抵当権抹消手続きに関する書類が金融機関から送られてきます。
- 抵当権設定契約書
- 抵当権解除証書
- 代表事項証明書または登記事項証明書
- 抵当権抹消についての委任状
これらの書類は「登記識別情報(権利証)」と一緒に、法務局にて抵当権抹消の申請にて使用します。
申請書は、法務局の公式ページにてひな型を印刷することも可能です。
※費用を抑えたい方はご自身でもできる手続きです。(費用は2,000円程度)
法務局/リンク:http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html
まとめ
今回は、アパートローンの借り換えをすべきなのかどうか迷っている方を対象に、
- 借り換えの仕組み
- 借り換えのメリットとデメリット
- シュミレーション方法
- 借り換えの流れ
- 必要な書類
などについて解説致しました。借り換えをすべきかどうかは、それぞれの判断によりますが、確実に返済額を削減し、利回りを向上させていけるのであれば是非活用したいものです。
近年では、金融政策として低金利が進んだことで、もともと金利の動きも小さいようです。従って、同じ金利レベルの金融機関に借り換えをしたとしても、大きな金利差を期待するのが難しいという現状もあります。
借り換え先は、前回では厳しいと思われたレベルの金融機関に挑戦してみると、大きな金利差が期待できるでしょう。
とくに融資額が半分以上返済済みの方、収益物件で安定した利回り、あるいは高い利回りを実現している方などは、金融機関からの信用度もレベルアップしているはずです。
この機会に、金利差1%以上を目標に、借り換え先の検討を始めてみませんか?