元保険会社社員が教える!銀行でおすすめされる一括払いの生命保険の活用方法と銀行窓販の一括払い生命保険の罠

一括払いの生命保険。銀行で保険商品を取り扱い出来るようになって以降、急速に販売が伸びている保険商品です。一括払いの生命保険とは、その名のとおり保険料を一括で支払うタイプの保険商品です。

皆さんが思い浮かべる一般的な保険は、毎月払いや年払いのタイプだと思います。しかしこの保険は保険料を一括で納めます。保険料を一括で払うメリット、デメリットはどのようなものがあるのでしょうか。

またそもそもー括払いの保険とはどのような商品なのでしようか。銀行の手数料稼ぎの象徴でもある一括払いの保険商品について詳しくまとめていきます。

一括払いの生命保険とは

一括払いの生命保険のことを、一時払い生命保険ともいいます。一括払い保険の主なものは、一時払い個人年金と一時払い終身保険があります。個人年金、終身保険の保険料の支払い方法には、月払い、半年払い、年払い、全期前納払い、そして一時払いがあります。

保険料の支払いは、まとめて保険料を支払うほど割引が効きやすくなるので、最も割引が効くのが全期前納払いとなります。全期前納払いと一時払いの違いですが、全期前納は分割で保険料を払っていくタイプの保険の保険料を一括で払う払込みの方式です。

一方の一時払いとは一時払い専用の商品の保険料を一括で払うことをいいます。

また生命保険には主に「終身保険」と「定期保険」の2種類があります。

終身保険とは、保険の有効な期間が一生涯にわたっているもののことをいいます。

一方の定期保険とは、保険が有効な期間が一定期間の保険のことをいいます。たとえば10年定期保険の場合は、保険の有効期間は10年間になります。

一時払いの商品は基本的に保健期間は終身になります。ではこの一時払い生命保険にはどのようなメリットデメリットがあるのでしょうか?

一括払いの生命保険のメリット

一括払いの生命保険ですが、利用するにあたって2つのメリットがあります

保険料が安い

一時払い保険のメリットの1つ目は保険料が安いことです。一般的に保険は保険料をまとめて払う方が安くなります。月払いよりも半年払い、半年払いよりも年払い、年払いよりも全期前納払いや一括払いのほうが保険料は安くなります。

保険会社からすると、まとめて保険料を払ってくれれば保険料を滞納されるリスクがなくなる優良顧客ということになります。優良顧客には割引を大きくしようということで保険料は安くなるのです。

加入条件が非常に易しい

一時払い保険のメリットの2つ目は、加入条件が非常に易しいことです。

一般的に生命保険に加入する際、身体の健康状態が問われます。保険金額によっては加入条件がかなり厳しくなるケースも少なくありません。人間ドックの結果や保険会社所定の病院で健康診断を受けてその結果によっては保険に加入出来ないことも多々あります。

一括払いの保険も当然加入する際に審査があると思われている方も多いかと思います。

しかし、一括払いの保険の場合、商品によってはほとんど健康状態を問われないものがたくさんあります。保険の加入が難しい高齢者でも入れる一括払いの保険商品はたくさんありますので、相続対策で保険に加入する高齢者は非常に多くなっています。

一般的な生命保険に80歳で入ろうと思ってもかなり厳しいですが、一時払い終身保険では健康告知が全くないものも多いので加入できるケースが非常に多くなります

一括払いの生命保険のデメリット

前の章では、一括払いの生命保険のメリットについてまとめました。この章ではデメリットについてまとめていきます。一括払いの生命保険のデメリットは、4つあります。1つずつ詳しく説明していきます。

早期で中途解約すると元本割れを起こす

一括払いの生命保険のデメリットの1つ目は、早期で中途解約すると元本割れを起こすことです。

一括払い保険は、契約してから短い期間で解約をすると元本が大幅に割れてしまう可能性があります。特に外貨建て(米ドルや豪ドル建て)の商品は要注意です。

外貨建ての商品の場合、契約して1年目で解約をすると10%以上の解約手数料が引かれる商品が多いです。保険は基本的には1度契約すると解約することは想定していませんが、ライフプランの変更などで解約せざる得ない時もあるかと思います。

一括払いの保険は非常に解約がしずらいので、このようなライフプランの変更に対応しにくいデメリットがあります。

レバレッジが効かないタイプの一括払いの終身保険が多い

一括払いの生命保険のデメリットの2つ目は、レバレッジが効かないタイプの一括払いの終身保険が多いことです。

本来保険とは、少ない保険料で大きな保障(保険金)を得るためにあります。よくTVCMでやっていますが毎月の保険料が2,000円でいざ万が一のことがあった時に500万円の保険金がもらえるようなものが保険です。

しかし、一時払いの終身保険は、資金のある高齢者を主なターゲットにしているので健康状態が重視されないタイプの保険が非常に多いのが特徴です。

特に多いのが運用重視のタイプの保険でレバレッジが効いていない商品です。レバレッジが効いていないタイプのものは、健康状態の告知内容が非常にゆるいので高齢者でも利用できる傾向にあります。

一括払いの生命保険を主に販売しているのは銀行です。銀行のお客さんでお金を持っているのは高齢者のことが多いです。健康状態に不安がある高齢者を相手にする銀行にとって告知のない商品は非常に販売しやすいという背景もあります。

健康告知のない終身保険のほとんどがレバレッジの効いていない商品が多いので本来の保険の機能を満たしていない欠点があります。

保険の見直しがしづらい

一括払いの生命保険のデメリットの3つ目は、保険の見直しがしづらいことです。一括払いの生命保険は、その名の通り一括で保険料を払うので保険の見直しが非常にしづらいです。

月払いや年払いの保険であれば良い商品が出てきたときも切り替えがしやすいですが、一括払いの生命保険の場合、早期で解約してしまうと元本が大幅に割れてしまう可能性が高いのでより良い商品が出ても切り替えしづらい欠点があります。

現在の利率は非常に低い

一括払いの生命保険のデメリットの4つ目は、現在の利率は非常に低いことです。一括払いの生命保険には、固定金利型の商品と変動金利型の商品があります。

固定金利の保険の金利は現在非常に低いです。一括払い生命保険の商品で多いのが、円建て・米ドル建て・豪ドル建ての商品が圧倒的に多いです。

円建ての商品は、日本円で運用をするので為替のリスクはないです。しかし日本円の金利はみなさんご存じだと思います。

2017年にマイナス金利が導入されて以来、過去最低を更新しています。円定期預金の金利は前代未聞の低さですし(大手都市銀行の普通預金金利は0.001%です。1年間100万円を普通預金にしておいても利息は10円しか付きません)住宅ローンの金利も過去最低の水準になっています。住宅ローンはネット銀行で借りると0.5%切っているところが多いです。

このような金利水準になっているので大多数の円建ての商品は販売停止になっています。

豪ドルの金利に関しても、現在オーストラリアの政策金利は過去最低の1.5%になっています。今後の見通しですが、野村証券の予想だと2019年8月に金利を上げる予想になっています。固定金利ですと契約時の金利が満期まで継続されるので最低金利の今契約するのは得策ではないのです。

米ドルに関しては今まさに利上げ最中であり今後も利上げを継続していくとの見通しが高いことから契約するかどうか迷うところです。為替は金利が上昇すると円安になる傾向にあるので今後為替が円安に向かっていくとの予想であれば契約するのはありかもしれません。

一括払いの生命保険の活用法

一括払いの生命保険は、相続に有効な保険です。相続に有効な理由は3つあります。

遺産分割の対象外になる

生命保険を契約をする際には、必ず死亡保険金受取人の指定をします。いざ万が一のことがあった場合には、遺産分割や法定相続など一切関係なく、生命保険金は指定された死亡保険金受取人に全額支払われます。

このため、生命保険の受取人に指定することで、特定の人に確実に一定額の財産を相続させることができます。また、この死亡保険金ですが遺産分割協議から完全に外れるので遺言を遺しておいても生命保険金は資産から除外されるのです。

わかりやすく説明すると
資産1億円あって、配偶者に50%、長男に50%の場合、配偶者に5,000万円。長男に5,000万円となります。

では次のケースはどうでしょうか?

資産1億円(うち生命保険2,000万円受取人配偶者)あって配偶者50%、長男50%の場合、配偶者に4,000万円(+生命保険2,000万円)、長男4,000万円となります。

生命保険2,000万円を除いた8,000万円を分割する形になるのです。

非課税枠が使える.現金化のスピードが速い

一括払いの生命保険、特に一時払い終身保険は相続対策に有効な商品です。生命保険は500万円×法定相続人の金額が非課税になります。

たとえば1億円の資産があった場合、預金ですと1億円に対して相続税がかかりますが、生命保険に加入しておけば500万円×法定相続人の分は非課税になるのでたとえば配偶者、子供3人の法定相続人が4人の場合、2,000万円分非課税になります。

1億円-2,000万円の8,000万円が課税対象になります。このケースだと1億円に対してかかる相続税は約262万円 8,000万円に対してかかる相続税は137万円になります。生命保険に入っているかいないかだけで100万円以上の差が出来るのです。

また預貯金は、相続が起きたときに凍結されて引き出しが出来なくなります。相続の手続が完了するまで半年くらい時間がかかることもざらにあるのでその間、被相続人の口座から資金を引き出し出来ないのは結構大変だと思います。

葬儀費用や未払いの入院費用の支払い、相続から10カ月経過したら相続税の支払いも必要になります。それらの費用を相続人も資金だけで補うのはかなりの負担になります。

大部分の資金が預金になっていると遺された相続人は苦労しますが、保険にしておけば、保険金の請求はかなり楽に出来ます。

保険は、遺産分割の対象資産から外れるので、法定相続人全員の許可なく死亡保険金の受取人に指定された人だけで手続きが可能になります。手続きしてから1週間くらいで現金化されます。スピーディーに手元に現金が入るので相続対策として保険に入っておくのは有効といえます。

私は銀行員なのですが実際に銀行で一時払い終身保険を販売しています。その際、実際に相続になった顧客の保険金の請求を手伝いましたが本当に1週間かからず保険金が下りました。

相続対策を行うための契約形態

相続対策を行うための保険の契約形態について説明します。

  • 契約者:本人(被相続人)
  • 被保険者:本人(被相続人)
  • 保険金受取人:相続人

が1番オーソドックスな保険契約形態です。本人に万が一のことがあった時、相続人に保険金が残るのでスムーズに資金移動が出来ます。

では次の契約形態はどうでしょうか?

  • 契約者: 相続人
  • 被保険者 :本人
  • 受取人: 相続人

これは生前贈与を受けている場合に有効な保険契約形態です。生前にお金を受け取った相続人が被保険者を本人(被相続人)にした一時払い終身保険を契約します。本人(被相続人)に万が一があった時に相続人に保険金が下ります。契約者は相続人になりますので税金は相続税ではなく所得税になります。所得税の中の一時所得になります。

一時所得は、

(保険金-保険料-50万円)÷2

で計算出来ます。所得税の中ではかなり優遇されている税金になります。

銀行窓販の一時払い終身保険の罠

現在は保険会社だけでなく銀行でも保険の販売を行っています。個人の顧客を相手にする商売をリテールといいます。

このリテール部門の収益の中心になっているのが一括払いの生命保険になっています。銀行は、一括払いの生命保険を販売すると、商品にもよりますが保険会社から販売手数料として、最大10%近くの手数料を保険会社から受け取ることが出来ます。(銀行は保険代理店の中でも最上位のランクに位置付けられています。)

もし1億円の一括払いの生命保険を販売すると販売手数料としてなんと最大1000万円の収益を稼ぐことが出来ます。これだけ高額の手数料を受け取ることが出来るので銀行はこぞって一括払いの生命保険を販売しにきます。金融庁から指導が入り販売手数料を開示することになりましたがまだまだ情報開示は十分ではありません。

今現在も一括払い生命保険は銀行の大きな収益源になっています。銀行は手数料の1番高い外貨建ての一時払い終身保険の販売をしたいので言葉巧みに外貨建て一時払い終身保険の勧誘してきます。

特にレバレッジの効いていない運用重視の一時払い終身保険を販売するときの勧誘文句は決まっています。運用重視のタイプにはターゲット機能というものがついているものが多いです。

このターゲット機能はどのような機能かというと、たとえば米ドル建ての終身保険の契約をしたとします1000万円で契約しターゲット目標値を
110%に設定したとします。

契約後、1日でも日本円で1,100万円に到達すれば自動解約になり円預金に入金されるといった機能です。解約手数料などの諸費用もコミコミで10%増えれば自動解約になる便利な機能ですがこの機能を巧みに利用して勧誘をしてきます。

もし、運用でお金を増やしたければ保険ではなく投資信託や外債を利用したほうがよっぽど経済的です。ターゲットタイプの保険は解約手数料だけでなくランニングコストが、ものすごく高いです。年間にかかるランニングコストは3%~4%かかります。もし10年保有した場合ランニングコストだけで30%~40%の手数料がかかります。

これではうまく運用が出来るわけありません。しかし銀行員はこのターゲット機能がついている終身保険を「運用と保障」を両立できる商品ですと売ってきます。銀行の顧客は安心感を求める人が多いので保険と運用の両立という言葉に引っかかるのです。

銀行で一時払い終身保険を購入する際には十分注意してください。

まとめ

今回は、一括払いの生命保険について説明しました。デメリットの多い商品ではありますが相続対策には有効な保険です。

しかし、相続対策で一括払いの生命保険に加入するのであれば、ターゲット機能がついている運用タイプの保険ではなくレバレッジが効いている
保険の加入をおすすめします。

もちろん健康状態がすぐれない場合はしょうがないですが、健康状態に問題なければ検討すべきです。銀行は健康告知のないほうが確実に手数料が入るのであまりレバレッジが効いたものをおすすめしてきません。

銀行や保険会社に多額の手数料が入る一括払いの生命保険ですが、使い方を間違えなければ良い商品もありますのでよく検討することが大切です。

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