目次
自動車を頻繁に利用する企業・法人において、ガソリン代の決済に大変便利な「法人ガソリンカード」について説明します。
多くの業務車両を抱えている事業所等においては、給油する機会が自然と頻繁に発生してきますが、それに伴って多数の支払い伝票も生じ、のちの経費計算やコスト管理などに大きな手間や時間がかかってしまいがちです。
ガソリンスタンドにおける実際の支払いの場においても、通常の現金払いでは紙幣・小銭を出し入れする煩わしさや、支払い頻度の多さが日々の業務遂行にあたってネックとなってきます。
そこでこれから「法人ガソリンカード」についての基本的な事柄から同カードを使うメリット、その他法人ガソリンカードのクレジット機能などについてお話ししていきます。
*法人カード(クレジットカード)に関してはこちら:
「法人カードとは?個人事業主や企業が法人カードを作るメリットまとめ」
*法人カードのラインナップを見てみたい方はこちら:
「法人カード6種類を比較紹介。チェックポイントを押さえ目的や予算にあった法人カードを選ぼう!」
法人ガソリンカードとは?
基本事項
法人ガソリンカードは、法人がガソリンスタンドでガソリン代を払うためのカードです。カードにはクレジット機能がある法人カードと無いものとがあります(後に詳細を説明します)。
カードの発行は車両単位で行われますが、登録できる車両の積載量に制限を設けている場合(4t車までのカード、それ以上も使えるカードなど)があります。
普段の利用に際しては、クレジットカードを使う感覚で特に難しいものではありません。カード類に無縁な従業員の方でも簡単に使いこなすことができます。
ガソリン代は登録した法人口座から引き落としが行われ、翌月やそれ以降の月末などに一括で引き落とされます。
ETC機能を備えた法人ガソリンカードでは高速道路料金の支払いにも使うことができます。ただし、高速道路上のガソリンスタンドの給油では支払いができないカードもあり注意が必要です。
その他にガソリンカードの紛失や盗難による不正利用に対する保険・補償サービスが付いているものも多く発行されています。
ガソリン代の管理・支払いの手間を簡素化
法人ガソリンカードの中にはインターネットから利用明細が閲覧できるものがあり、「車両番号・日時・スタンドの場所・給油量・単価・支払い金額」といった履歴を簡単に確認することができます。
これによってガソリン代の他様々な事柄を整理し、コスト管理や経費の節減を行うことができるようになります。
また、よくありがちな社員・従業員によるガソリン代の立て替えといったことも、ガソリンカード払いへの一本化で発生しなくなり、支払いにおける手間の解消や経費の不正請求等を防ぐことができます。
支払いは法人口座からの後払いで、またカードの種類や条件によっては「翌々月の引き落とし」となっているものもあり、支払いを遅らせて資金の回転が柔軟にできるようにもなります。
クレジット機能があるカードと無いカードの違い
法人ガソリンカードにはクレジット機能があるカードと無いカードがありますが、ここではそれぞれのカードの違いやメリット・デメリットなどを説明します。
クレジット機能がある法人ガソリンカード
メリットや特徴
「幅広い買い物に利用することができる」
法人ガソリンカードは給油代金の支払いのために発行されたカードですが、クレジット機能がある場合、給油以外の出費にも使うことができます。
カードにJCBやVISAなどといったクレジットカードのブランドが付いていれば、通常の買い物等にも利用でき、1枚で多くの支払いに対応させることができます。
以下は、各法人ガソリンカードが使えるサービス対象の範囲区分(例)になります(付帯サービス等除く)。
- クレジット機能なしのガソリンカード・・・給油のみ / または給油&ガソリンスタンド内の商品購入
- クレジット機能ありのガソリンカード・・・給油&ガソリンスタンド内の商品購入&一般クレジット加盟店での買い物
「ポイントサービス、キャッシュバック」
通常のクレジットカードと同じように給油等代金に対しポイントが還元されます(ポイントサービス実施が条件)。また、キャッシュバックサービスを行っているカードもあり、年会費等との兼ね合いも考慮すればお得にカードを使うことができます。
出典:昭和シェル石油(株)
「付帯サービス」
クレジットカードの基本である様々な付帯サービスを受けることができます。
ショッピングにおける盗難や破損等にあった際の補償、空港ラウンジの無料利用、ホテル宿泊の優待割引など様々あります。
出典:(株)ジェーシービー
デメリット
「申込み審査」
通常のクレジットカードと同じように審査があります。場合によってはカードの取得ができない可能性があります。
審査にあたっては、その審査項目や基準が公開されているわけではありませんが、主に次の項目が重要であるとされています。
- 固定電話回線の有無、電話番号
- 決算(良好か赤字か)
- 開業届
- 事業年数
個人事業主などは事業実績が短かい場合もありますが、法人ガソリンカードや一般の法人カード等を取得できた事例は多くあります。
また以下の項目も、その実績が優良であれば法人ガソリンカードの審査においてはアピール材料となりますが、そうでない場合は注意が必要です。
- 他の法人系ローンの利用・返済実績
- 個人としてのクレジットカード等の利用・返済実績
ちなみに参考としまして、JCBカードの例から申請の際に提出する添付書類を上げておきます。
*通常の法人の場合
- 「現在事項全部証明書」か「履歴事項全部証明書」の原本または写し
- 代表者の本人確認書類の写し(運転免許証、パスポート、マイナンバーカード、健康保険証など)
- 場合によって提出を求められる補完書類(公共料金の領収書、納税証明書など)
*個人事業主の場合
2.及び場合により3.
「年会費が発生するカードが多い」
年会費については、通常会員の場合千円~2千円程度、ゴールドなどの上位ランクカードの場合は1万円程度かかる傾向があります。
これもやはり、ポイントサービスやキャシュバック特典、普段の利用状況などから総合的に判断する必要がでてきます。
「社員の不正利用の可能性」
給油以外にも使える性質は非常に魅力的ですので、利用履歴の存在や所有枚数の制限があったとしても、業務上必要とされないものにまで使われてしまう可能性も否定できません。
従って法人ガソリンカードの貸与においては、利用する従業員や利用場面の限定、定期的に利用状況をチェックすることなどのセキュリティ対策が必要となってきます。
「あまり発行されていない」
理由は定かではありませんが、クレジット機能が付いた法人ガソリンカードは種類が豊富なわけではありません。
現在発行されているものとしては、昭和シェル石油が発行しているガソリンカードやコスモ石油から出ているものの他多くはないのが現状です。
出典:(株)ジェーシービー
クレジット機能が無い法人ガソリンカードについて
「年会費が無料のカードが多い」
年会費がかからないのは大きなメリットです。これは多くのクレジット機能がない法人ガソリンカードに共通している部分であります。
しかし、給油単価が店頭価格や契約価格である場合が多く、出費の面では年会費以外でお得となる部分が少ないです。
利用明細等で支出の管理を徹底するなど、やはりそれなりの資金管理努力は必要となってきます。
「ほぼガソリンの給油にしか使えない」
タイトル通りの目的でしか使わないのでしたら問題はありませんが、クレジット機能が付いてないため、給油の支払いか、カードによってはガソリンスタンド店内の商品の購入にしか使うことができません。
「審査がほぼない」
ガソリン代は後払いではありますが、クレジット機能がある法人ガソリンカードのような一定の審査があるわけではありません。
カードの入手にあたっては、会社が実在することを証明するための各種書類や代表者の本人確認書類を申請書とともに提出することで、後日カードを手に入れることができます。
「ガソリン代を直接下げるものではない」
店頭価格による支払いであったりポイントサービスなどの特典が無いので、給油にしか使えないことと合わせ、資金管理の一環として使うといったスタンスを取ることが重要です。
「社員の利用を限定できる」
クレジット機能がなくほぼ給油以外では使うことができませんが、逆にそれは社員へのカード利用の引き締めともなり、不正利用や思わぬ出費等の発生を抑えることができる面があります。
「独自サービスを提供しているカードもある」
例えば出光のガソリンスタンドで使える法人ガソリンカードでは、カード会員のみに別途カードローンを案内していたり、当カードが利用できる事務用品購入サービスを提供していたりもします。
出典:出光クレジット(株)
クレジット機能があった方がいいかどうか
多くの法人ガソリンカードにおいてガソリンの給油単価は、スタンドの店頭価格か契約で決められた価格(契約価格)となっております。
従って、経費節減やお得感を得ようという場合は、いくつかの特典が用意され実質的な単価軽減が期待できる「クレジット機能の付いたガソリンカード」が向いています。
事務作業や支払いの煩わしさを軽減することが第一の目的であれば、年会費が無料となっている「クレジット機能の無いカード」を選べばいいわけです。
法人ガソリンカードを選ぶポイント
法人ガソリンカードを選ぶ際にどういったところを基準にしていけばよいのか、以下にそのポイントとなる部分を説明します。
業務内容や会社の実態から考える
「利用目的」
純粋に業務車両への給油が目的であれば、年会費がかからないクレジット機能無しのカードが最適です。
一方で営業や外現場を持つ会社など、軽食・飲料、お茶代、比較的安い物品などちょっとした買い物が発生するようでしたら、クレジット機能がある法人ガソリンカードも候補となってきます。
「行動範囲」
給油に特化した使い方であっても、車の走行先周辺や移動経路上にガソリンスタンドが適切に存在しなければ給油が不便となってしまいます。
当然ですが各カードは、発行している会社・系列のガソリンスタンドでしか使えませんので、スタンドの設置箇所を事前にチェックすることが必要となってきます。
また、各ガソリンスタンドの設置数も影響してくる要因となってきます。
*ガソリンスタンド 店舗数(一部)
- ENEOS・・・約10,000(2018年11月現在、2019年7月までに「エッソ・モービル・ゼネラル」が加わり約13,000店舗となる予定)
- 昭和シェル・・・約3,000(2017年12月現在)
- コスモ石油・・・約2,800(2018年3月現在、地上固定式スタンドのみ)
- 出光・・・約3,500(2018年11月現在)
- キグナス・・・459(2018年3月現在) など
「経費の管理」
給油にしかほぼ利用できないクレジット機能無しの法人ガソリンカードであれば、決済の費目がほぼ限定されますので、シンプルな支出管理を行うことができます。
社員数が多い会社や煩雑な業務内容の場合でどうしてもクレジット機能も使いたいといったケースであれば、クレジット機能付きのガソリンカードが向いてくることとなります。
ただクレジット機能がある法人ガソリンカードは、その利用明細をまめにチェックすることや、別途利用ルールを設けるなどして、社員の利用モラルを向上させることが必要となってきます。
「カードの利用者数」
社員数が少なければ入手すべき法人ガソリンカードの数も抑えられ、たとえクレジット機能のある年会費有料のカードであっても、カードの管理に手間がかかりにくかったり、出費もそれほどかからずに済みます。
逆に社員数やカードを使う対象者が多い場合、上記の逆といった形となります。
また年会費が無料のカードでもETCカードには年会費がかかるカードもあり、取得枚数に注意が必要です。
発行されている法人ガソリンカードから検討する
「出光Bizカード プラス」
出光からは複数の法人ガソリンカードが発行されておりますが、こちらのガソリンカードは経費管理に特化したカードとなっています。
車両ごとの明細管理はもちろん、事業所ごと・支店ごとなどの経費管理に優れており、車両台数が多い会社などに向いているカードです。
年会費は無料でガソリン価格は予め決定した契約価格となっています。
出典:出光クレジット(株)
「シェルビジネスカード」
キャッシュバック特典が明快でお得なJCBブランドのクレジット機能付きカードです。月間の利用額が5万円の場合は0.5%、100万円以上で3%の還元率となっております。
また給油のみならず、高速料金や宿泊費用などもキャッシュバック対象となっていて非常にお得です。
「ENEOS 法人ガソリンカード」
エネオスが発行している法人ガソリンカードで計4種類あります。
エネオスのものは、一般個人向けのカードにはクレジット機能を備えたものがありますが、法人用にはその機能がありません。
エネオスはガソリンスタンドの店舗数が10,000以上あるのが強みであり、カードの利用においてその行動半径の広さがメリットです。
ただし、最も基本となる「ENEOS BUSINESS」カードは有効期限が7年と長く1枚から発行できますが、他のラインナップは軽油専用であったり最低発行枚数50枚以上などの条件が設けられています。
「高速情報協同組合のカード」
国から認可された中小企業の取り組みを応援する組織で、上記リンクで見れますように「審査なしでの法人ガソリンカードの発行」を大々的に謳っております。
年会費・手数料無料で、ENEOSか出光のいずれかのカードを選ぶことができます。
ガソリン価格は全国の上記系列店舗(選択した方)の平均価格となっており、どのスタンドで給油を行っても一定の支払いで済ませることができます。
複数台分のカードを作成できることや、1台ごとの利用明細も手に入れることが可能となっています。
懸念すべきこととしては、当組合への加入が義務付けられていることから、出資金1万円を支払わなければならないことです(ただし退会時に返金されます)。
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まとめ
法人ガソリンカードは、直接的な節約効果やコストダウンが大きく期待できるというわけではありませんが、以下のまとめのようなメリットが魅力であり、導入する意義は大きいカードです。
「法人ガソリンカードのメリット」
- ガソリン代はカード払いでシンプルな運用
- 利用明細で支出を明快に管理
- 後払いによる手元資金の充実
- クレジット機能付きガソリンカードならば様々な決済に使えポイントや付帯サービス等が得られる
また導入に際し注意すべきことも以下に整理しておきます。
「法人ガソリンカードの注意点」
- カードによっては年会費がかかる
- 車両の移動エリアとガソリンスタンドの設置位置を考慮する必要がある
- 特にクレジット付きガソリンカードの場合社員の過剰・不正な利用が懸念される
- 利用明細の活用やカード運用ルール等で能動的な経費管理も必要
*通常の法人カード(クレジットカード)について知りたい場合は:
*通常の法人カードのラインナップを見てみたい方はこちら: