マーケット(株・為替・金利)の変動要因と関係を知ろう!

今回は、景気や物価がマーケット(株・為替・金利)にどのような影響を与えているのかを解説します。それぞれの経済指標やマーケットは密接に関わっています。まずは、景気がマーケットに与える影響から見ていきましょう。

マーケットと景気の関係

景気とは、経済活動全般の動向のことです。つまり地域全体、日本全体で考えて商売(ビジネス)がうまくいっているかどうかということです。「景気がいい」とは、商売(ビジネス)がうまくいっているので「好景気」と呼ばれ、商売(ビジネス)がうまくいってない時は、「不景気(不況)」と呼ばれます。

出典:東海東京証券

指標では、景気動向指数が用いられます。

景気動向指数とは

景気動向指数とは、 景気全体の現状を知ったり、将来の動向を予測したりするときに使われる経済指標です。金融、労働、産業など、経済に重要な28項目の景気指標をもとに指数が算出されています。

景気動向指数には、コンポジット・インデックス(CI)とディフュージョン・インデックス(DI)の2種類がありますが、マーケットではDIを重要視しています。DIは、構成する28の経済指標のうち、上昇を示している指標の割合が2ヶ月連続して50%を上回っている時は景気拡大、50%を下回っている時は、景気後退と判断されます。

景気動向指数の中でも、特に重視される指標として、以下の三つがあります。

 

①有効求人倍率

②完全失業率

③鉱工業指数

 

それぞれ詳しく見ていきましょう。

有効求人倍率とは

有効求人倍率とは、有効求職者数に対する有効求人数の割合で、雇用動向を示す重要指標です。景気とほぼ一致して動くので、景気動向指数の一致指数となっています。 計算式は以下のようになります。

有効求人倍率 = 有効求人数 ÷ 有効求職者数

有効求人倍率が「1」より大きいということは、求人数(仕事の数)が多く、働き手不足となります。「1」より小さくなるほど求職者数(仕事をしたい人の数)が多く、仕事探しが難しくなります。「1」より大きくなっている時は、いわゆる「売り手市場」です。バブル期のピークだった1990年4月の有効求人倍率は1.46倍でした 。2018年9月の有効求人倍率は1.64倍で、バブル期を超えています。2008年に起こったリーマンショック直後の数値は0.4倍でしたので、そこから約4倍になったことがわかります。以下の図をご覧ください。

出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構

次に説明する完全失業率と、有効求人倍率の戦後からの動向です。現在の有効求人倍率

はバブル期を超え、高度成長期並となっているのが分かります。

完全失業率とは

完全失業率とは、15歳以上の働く意欲のある人(労働力人口)のうち、完全失業者(職がなく、求職活動している人)が占める割合で、雇用情勢を示す重要指標の一つです。計算式は次のようになります。

完全失業率(%) = 完全失業者数 ÷ 労働力人口

直近の数値を見てみましょう。

出典:総務省統計局

完全失業率は2%台に入り、バブル期並みの水準まで下がっていることがわかります。

鉱工業指数とは

鉱工業指数とは国内の鉱業と製造業がどのくらいのモノを生産・出荷し、どのくらいのモノを在庫として抱えているかを指数で表したものです。経済産業省から毎月発表されています 。

GDPとは

景気動向指数で用いられる有効求人倍率や完全失業率よりも、さらに重要なのがGDP(Gross Domestic Product:国内総生産)です。 GDPは、日本国内で生産された付加価値の合計(通常は1年間)を表しています。 付加価値とは、総売上から原材料の購入額などを引いた値で、簡単に言うと「儲け」を表します。つまり、付加価値が上がっているということは、多くのの商売(ビジネス)が成立しているということになります。

GDP の値が大きければ経済規模が大きい、値が小さければ経済規模が小さいということになります。ですから、昨年と比べて大きくなれば景気が良くなっていることを示します。

世界のGDPランキングを見てみましょう。以下の図をご覧ください。

出典:グローバルノート

1位は米国、2位中国、3位日本となっています。GDPは経済規模を表しているので、国際比較が容易であるという利点もあります。それでは、景気とマーケット(金利、株価、為替)の関係を見ていきましょう。

景気と金利の関係

一般的に景気が良くなると、企業などの資金需要が増加するので、市場金利は上昇します。反対に景気が悪化すると、資金需要が減少するので、市場金利は下落します。 詳しく解説します。

出典:全国銀行協会

景気が向上すると、消費者の購買意欲が増します。景気とともに個人消費が拡大すれば、企業はモノを多く生産し、設備投資を活発化させます。そうすると、銀行などに資金を借入れる需要が増えることになります。金融機関は貸し出し増加により資金不足となり、金利は上昇するのです。

景気が過熱するとインフレ(モノの値段が上がること)になり、ますます資金需要が高まり、金利が上昇します。

インフレへの対応策として、中央銀行(日本銀行)により金利引き上げがあります。金利が上がると、人々は預貯金にお金を回すようになり、モノやサービスに対する購買意欲が減退していきます。

その結果、モノが売れなくなり企業の売上が減少し、設備投資を鈍化させます。資金借り入れの減少により、金融機関の貸し出しは減少し、資金が余るようになります(資金余剰)。そうすると金利は低下します。

景気と株価の関係

景気と株価には次のような関係があります。

  • 景気拡大→株価が上昇
  • 景気後退→株価が下落

しかし、株価は景気の先行指数ともいわれています。内閣府が算出している景気動向指数にも先行系列として東証株価指数(TOPIX)が用いられています。 理由のひとつは、投資家が景気の悪化を予想して先回りして株を売るため、景気が悪化するよりも株価の方が先に下落するということです 。

株価というのは、証券取引所で売買され、リアルタイムで値段が出ています。しかし、景気を判断するGDPや完全失業率 、鉱工業指数などは、統計を取ってから発表までタイムラグがあります。ですから、経済状況の実態が出てくるまでは時間がかかるのです。

また、株価下落自体が景気にマイナスに働く可能性もあります。株価が下落すると、株で損をした投資家は購買意欲を減少させる可能性があります。逆に、株価が上がれば購買意欲は上昇するでしょう。

このように、景気と株価には密接な関係があります。

景気と為替の関係

景気と為替の関係は次のようになっています。

 

景気拡大→円高要因

景気後退→円安要因

 

しかし、為替レートは2国間の関係で決まるので、様々な要因が絡んできます。主な為替変動要因は次の3つがあるといわれています。

 

1.内外金利差

2.貿易収支

3.購買力平価

 

内外金利差は後ほど解説するので、ここでは貿易収支と購買力平価についてご説明します。

貿易収支

米国との二国間で考えてみましょう。日本から米国への輸出が増えると、米国から受け取るドルが増え、日本ではそのドルを売って円を買うので、円高・ドル安傾向になります。以下の図をご覧ください。

出典:じぶん銀行

逆に、輸入増加の場合は、手持ちの円を米ドルに変えて代金を支払うので、外貨の需要が増加します。これは、円安・ドル高要因となります。

出典:じぶん銀行

続いて、購買力平価について見ていきましょう。

購買力平価

購買力平価とは、貿易相手国の物価と比較して、為替を計算する方法です。長期的な為替の見方を表し、物価が上昇すると、その国の通貨は安くなります。

例えば、ハンバーガーが米国4ドル、日本320円ならば、320円 ÷ 4ドル = 80円となり、1ドル80円が妥当とみなされます。アメリカでインフレになり、ハンバーガーが16ドルに値上がりした場合、日本で320円のままならば、320円 ÷ 16ドル=20円となり、円高傾向になります。

出典:ダイヤモンドザイ

マーケットと物価の関係

続いて、マーケットと物価の関係について見ていきましょう。

物価とは

物価とは、その国で1年間生活するために必要な商品・サービス等の平均価格です。つまり、日本で売られている商品全体の値段を指しています。物価変動は、私たちの生活に様々な影響を与えるだけでなく、景気とも密接に関係があります。

物価を測る経済指標

  • 消費者物価指数

消費者物価指数とは、CPI(Consumer Price Index)とも呼ばれ、消費者が購入するモノやサービスなどの物価の動きを把握するための経済指標で、総務省から毎月発表されています。消費者物価指数で物価の変動を見ることができるので、国民生活水準を示す指標の一つとなっています。

出典:総務省統計局

インフレとデフレ

出典:日本経済新聞

物価が上がり続ける現象をインフレーション(インフレ)といいます。 逆に、物価が下がり続ける現象をデフレーション(デフレ)といいます。物価は需要と供給で決まります。消費者の購買欲が強く需要が高い場合は、インフレになり物価が上がります。そして、消費者の需要が減少した場合は購買力が下がり、物価も下がります。それがデフレです。

1970年代からの消費者物価指数の推移は以下の図のようになります。

出典:日本経済新聞

戦後の日本は何度かインフレを経験していますが、特に物価上昇率が高かったのが、1973年に起きた第1次石油危機の時です。この時の消費者物価指数は20%を超え、インフレが起こっていることがわかります。80年代から90年代初頭のバブル景気の時や、消費税率が上がった97年にも物価は上昇しましたが、90年代後半からは、デフレ状態が長い間続いています。国内の需要減退とともに、経済のグローバル化により中国など海外から安い商品が大量に流入してきたことも原因といわれています。

日銀による金融緩和

物価の動向は、金融政策とも密接な関係があります。デフレからの脱却を目指すために、日銀は1999年から政策金利を限りなくゼロに近づける「ゼロ金利政策」を導入。さらに、国債など金融資産を購入することで市場に大量の資金を供給する量的緩和に踏み切りました。さらに株式市場から ETF(上場株式投資信託) やREIT(不動産投資信託)の買いも行い、資産価格の上昇も狙っています。

ただし、金融政策だけで物価を上昇軌道に乗せるということは困難なことです。デフレから脱却するためには、経済や産業が活気を取り戻し、景気が回復する必要があります。

また、現在までのところ、金融緩和量的緩和による効果は小さかったと言わざるを得ません。量的緩和によってお金を借りたい企業に資金が供給されるように準備を整えましたが、お金を借りたい企業というのがそれほどなかったというのが原因です。

また、市場で ETF やREITを購入していますが、いずれ売却する必要があります。日銀の役割というのは、物価を安定化させるということです。経済を成長させることは大切なことですが、それによってインフレが起こるなど物価が安定しなければ、国民生活にも大きな影響を及ぼす可能性があります。

物価と金利の関係

インフレになり物価がどんどん上昇していくと、お金の価値が低下してしまいます。お金の価値を表すのが金利なので、インフレでお金の価値が下がった場合、金利を上げることでお金の価値も上がります。

デフレでは物価がどんどん下落していき、お金の価値は上昇していきます。デフレが続くと、企業収益も悪化し、不景気になっていきます

一般的に、物価動向と市場金利の動きは連動しています。物価が上がると市場金利も上がり、物価が下がると市場金利も下がる傾向にあります。つまり、以下のようになります。

 

物価上昇(インフレ)→お金の価値低下→市場金利上昇

物価下落(デフレ)→お金の価値上昇→市場金利低下

 

為替と金利の関係

一般的に、お金は金利が高い方へ流れる傾向があります。ですから、米国が金利を引き上げると、日本から米国にお金が流れるので、円が売られ(円安)、ドルが買われます(ドル高)。一方、日本の金利が上昇すると、円高ドル安になる傾向があります。つまり、日本円で考えると以下のようになります。

  • 金利上昇→円高
  • 金利低下→円安

金利と株価の関係

一般的に、金利が上昇すると相対的に株式の魅力が下がるため、株価は下落します。一方、金利が低下すると株式の相対的な魅力が上がるため、株価は上昇します。つまり、以下のようになります。

  • 市場金利の上昇→株価下落
  • 市場金利の下落→株価上昇

 

ただし、景気循環によって、この関係は以下の図のようになります。

出典:nikkei style

景気拡大の初期は、金利が低いままなので株価が上昇します。そして、景気拡大の中期になると金利が上昇し始めますが、株価もしばらく上昇を続けます。それが景気過熱期になると、金利上昇が足かせとなり株価は下落になります。

景気後退期はこれと逆の考え方となります。景気と金利、株価の関係から、現在は景気のどの水準にいるのかを考えながら投資すると、よりマーケットを見やすくなると思います。

例えば、現在の米国市場は長期金利の動向を意識し始めています。10年債の利回りが3%を超え、景気過熱期に入っているかどうかが議論になっているのです。FRB(米連邦理事会)の利上げが続けば、景気過熱期で株価が下がる恐れもあります。このように、金利は株価に大きな影響を与えます。株式投資する上で、金利動向には注視する必要があります。

為替と株価の関係

為替と株価にも相関関係があります。ここでは、代表的な株価指数である日経平均株価について考えます。一般に為替が円安になると株価は上昇し、円高になると株価は下落します。詳しく見ていきましょう。

  • 企業業績への影響

為替の影響と株価と言っても輸出企業と輸入企業では影響が逆になります。米ドルと円で考えてみましょう。

輸出企業にとって、円安ドル高になれば、海外で1ドルのモノが売れた場合、円高の80円と円安の120円では120円の方のメリットが大きくなります。逆に輸入企業の場合は、1ドルで物を購入した場合は80円の方がメリットになるので、円高ドル安が有利になります。

ですから、輸出企業にとっては円安ドル高が株高に、輸入企業にとっては円高ドル安が株高につながります。ただし、日経平均株価を考えた場合、ハイテク産業や自動車産業といった輸出企業の割合が高いので、円安が株高につながる傾向にあります。

まとめ

今回は、景気や物価がマーケットにどのような影響を及ぼすのか、マーケットの株や為替・金利が、どのように影響しあっているかを見てきました。株式投資においては、株価だけではなくそれと密接な関係を持つ、為替や金利動向を確認することは大切なことです。そして、完全失業率 やGDP、 消費者物価指数などの経済指標も確認し、景気や物価がどうなっているのかということを把握することによって、運用成績を上げるための手助けとなるでしょう。

 

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