目次
家が欲しい!そう思ったら、まず最初に何をしますか?
モデルハウスを見に行く?ネットで物件を探す?
実はどれも違います。まず考えるべきは「お金のこと」!
そもそも自分たちの収入で買える家は、いくらまでなのか?価格を把握していますか?
案外、お金のことをしっかり考えず、まず見に行ってしまう方が意外とたくさんいます。
そうすると、どうしても後々返済負担の大きいローンを組んでいるケースが多くみられます。
正しくは、まず予算決め、どのぐらいの金額の家なら買えると基準を決めることが重要です。
では、その「買える基準」を見極めるためにはどうしたらよいのでしょうか?
ここでは後々苦労しない住宅ローンの限度額についてお話ししていきます。
いくらまでなら、ローンを組めるのか?
マンションでも一戸建てでも、自宅を購入する手順はどのようなものがべストでしょうか?
まず、よく言われるのが「最初に物件を見てはならない」というポイント。
パソコンや車、なんでもそうですが、高価な買い物をする際はある程度出せる金額を決め、それから品物を検討しませんか?住宅も同じです。
しかし、住宅となるとなぜか意外と具体的な予算を考えず、まずは住宅展示場に行ってしまったりします。これはNGです。
なぜなら先に良い物件を見てしまうと、どうしてもそれを購入したいと思ってしまうからです。日用品であれば、多少の妥協もできますが、住宅となると一生の買い物ですので、「どうせ一生住むなら、条件の良いところの方がいい!」となってしまい、無理なローンを組んでしまいがちになるからです。
ファイナンシャルプランニングセミナーなど、お金に関するセミナーを開催しているところもあるため、「まずは相談してから~」と気軽に行く方も多いようですが、そういったセミナーに参加する予定でも、ある程度「予算はここまで!」という目安を決めてから行きましょう。
しかし、なかなか目安の金額を知るのは難しいところ。マンションや建て売りなど、あらかじめ価格が決まっているものでも、世の中の動きによっては大きく価格が変動します。
そもそも物件の値段が高騰している時期では、どこの物件でも高くなりますので、周りの物件の金額の平均などで考えてしまうと、自分の家計に対して現実的な買い物ではなくなってしまいます。
一番良いのは、「自分たちが払える額」を基準にすることです。
それでは、この「自分たちが払える額」を見極めるためにはどうすればいいのか、このあと順にご説明していきます。
「銀行で借りられる限度額」=払える限度額ではない
家の購入となると、とても夢がありますよね。
こんな素敵な家が欲しい…ご家族で話し出すと夢が膨らんで止まらない人も多いのでは?
しかし、まず考えるべきなのは、間取りや設備ではありません!
「自分たちはどのくらいの値段の家が買えるのか?」これを見極めなければなりません。
確かに、住宅展示場や住まいの相談会などに行くと、必ず見積もりを計算してくれます。変動金利や固定金利、ローンで借りられる金額など、さまざまなことを教えてもらえます。
しかし、そこで買える価格を決めてはいけません。
なぜかというと、「そもそも銀行で借りられる限度額は、額が大きすぎる」からです。
銀行の審査基準となる「借入限度額」の仕組み
例えば、マンションの住宅展示場などに行くと、モデルハウスを見学した後にローンの見積もりや試算表を作成してくれます。ここで借りられる限度額がいくらかという説明もあるでしょう。
借入限度額は、金融機関が定めている返済負担率を目安に計算されています。
- 返済負担率:融資の際の審査基準。住宅ローンでは、年収に応じて25%~35%以内としている金融機関が多い。
- 借入限度額の計算式:借入限度額=年間返済可能額(年収×返済負担率)÷12ヶ月÷(金利3.0~4.0%の100万円当たりの月々返済額)×100万円
参照:不動産サイト nomu.com 自分にあった住宅ローンを選ぼう
https://www.nomu.com/loan/knowledge/standard_01.html
例)フラット35の場合
年収 | 400万円未満 | 400万円以上 |
基準 | 30%以下 | 35%以下 |
参照:住宅金融支援機構 【フラット35】ご利用条件
https://www.flat35.com/loan/flat35/conditions.html#conditions14
この借入限度額の割合で計算すると、年収500万(額面)の場合、フラット35で35年間借り入れできる金額は
となります。
つまり、金融機関から「3293万円」まで借入することができます。これだけ見ると、かなり条件の良い物件の価格に手が届きそうな感じがしますよね。
しかし、この金額を見て「じゃあ、うちでも3300万台の物件が買えるんだ!」と思ってはいけません。
この金額はあくまでも「金融機関から借りられる限度額」です。「自分たちが完済できる金額」ではないからです。
借入限度額を基準にしてはいけない理由
ローンの借りられる限度額=借入限度額なんでしょ?じゃあ、それを目安にすればいいんじゃないの?
そうおっしゃる方もいますが、それはNGです。
そもそも、ローンは借金ですからいつかは完済しなければなりません。また住宅ローンは30年近く、毎月支払いが続いていくものです。
期間も長く金額も大きい分、返済期間も無理なく生活できるよう余裕のある借入額でなければ、月々の暮らしや将来のライフプランに影響が出てきてしまいます。
では、余裕をもって返済できる借入額とは、どのように求めたらいいのでしょうか?
通常余裕をもって返済できる返済負担率は20~25%までと言われています。
先にご説明した借入限度額の計算方法で使用されている返済負担率は、30~35%です。
これだけ見ても、10~15%ほど厳しめの返済プランを想定していると言わざるを得ません。
そのため、銀行の借入限度額は、今の収入状況で借りられる本当にぎりぎりの限度額であるといえます。
理由は、月々の支払金額例を算出してみるとわかりやすいでしょう。
例えば、先ほど例に挙げた年収500万円の方の返済負担率の上限は「35%」でした。
これをもとに毎月の返済額を計算すると、
年間の返済額:500万×35%=175万
月々の返済額:175万÷12か月=14万5000円
つまり、毎月約14万5000円返済しなければならないのです。
税金などを差し引いた毎月の手取りが30~35万程度であれば、そこから14~15万を毎月返済すると考えると、残りは15~21万。
ざっくりとした計算ですが、つまり返済期間の35年間は、平均手取りの約半分で食費や光熱費、通信費などやりくりしなければならないことになります。
特にもし今後、子供を持つ予定がある・成長して教育費がどんどんかかってくるなど、長期にわたってお金のかかるライフイベントがある場合は、このようなぎりぎりのローンを組むのはお勧めしません。
なぜなら、もともと厳しめの返済プランであるのに、よりお金がかかる時期になってくると、月々の返済が難しくなってしまうからです。
もし今は月々の返済がなんとか可能でも、お子さんが高校・大学と進学していく段階で、返済が難しくなってしまいますし、教育資金だけでなくとも老後資金など、住宅ローン返済中にも貯めておかなければならないお金はたくさんあります。
また今後、車や教育ローンなど、他の借り入れが必要になった際にも影響があります。
金融機関は審査をする際、その方が今契約しているローンの金額をトータルで見て、どのくらいのお金が貸せるか判断します。
常識的に考えても、借金がたくさんある人にたくさんのお金を貸すのは不安ですよね?なので、その人がほかの借金も合わせて支払える金額を算出します。
ただしそのために、住宅ローンの残高が高額だったりすると、他の借り入れの借り入れ可能額が少なくなってしまいます。
つまり、将来必要なローンが組めないという可能性がでてきてしまうのです。
このような理由から、銀行が提示する借入限度額を目安にして住宅購入を決めてしまうのは、危険と言えるでしょう。
「自分たちが払える限度額」を見極めるには?
銀行の審査基準の金額がぎりぎりとしたら、何を目安にローンを考えたらいいの?
では、余裕をもって返済できるローンを組むにはどうしたらいいのでしょうか?
ポイントは、「自分たちが払えるローンの上限額」を見極め、「適正な価格の物件」を購入することです。
つまり、「今の自分たちが金融機関から借りられる額」ではなく「これからの自分たちが無理なく返せる額」を見極め、エリアや築年数から「適正な価格の物件」を探すのがベストとなります。
では、どうやって見極めればよいのでしょうか?
自分たちが組めるローン金額を見極める
「自分たちが無理なく返せる額」はどうやって求めればいいのでしょう?
ポイントは、「月々の返済額の上限はいくらか?」「いつまでに完済したいか?」の2点です。
一般的に、負担にならない月々の返済目安は、「手取り月収の20%」になります。まずは今の自分たちの収入やライフプランを考えて「ローンの上限額」を求めましょう。
例えば、下記の場合を考えてみましょう。
- 購入者の年齢:30歳
- 世帯収入(手取り):月30万
- 返済期限:60歳までには完済したい=返済期間30年
この場合、毎月の返済額からローンの上限額を求めると、
- 毎月の返済額:30万×20%=6万円
- 無理なく返済できるローンの限度額:6万×12か月×30年=1420万
つまり、無理なく返済できる限度額は「1420万」となります。
よって、現実的に借りてもいいローン金額は1420万が限度と言えるでしょう。
参照:図解住宅ローン 年収(負担率)から住宅ローン借入可能額を計算する
https://www.sumai-fun.com/l-hikaku/023/post-26.html
でも実際問題、この額ではなかなか希望の物件には手が届かないですよね。ではどうすればいいのでしょうか?
答えは、足りない金額は頭金として準備するのがベストとなります。
例えば3000万の物件を買いたいとして、借りられる限度額が1420万とすると、足りない分1580万は頭金で補うと考えます。
よく「頭金はいくら準備すればいいのか?」という質問を受けることもありますが、このように「『自分たちが返済できるローン金額』に足りない分を準備するもの」と考えればよいでしょう。
一見当たり前のようでもありますが、実際にやってみるとなかなか金額の目安がわからないものです。
一番やってはいけないのは、「銀行から借りられる借入限度額に足りない分を、貯金から出す」というやり方です。
なるべく借入額は少なくすべきですが、銀行の借入限度額を目安にして、頭金の額を考えるのはNGです。
また、今は「相続税精算課税制度」など、住宅購入を支援する制度がたくさんありますので、貯金が厳しいという場合は、親御さんから資金援助をお願いするなども一つの方法です。
お得な制度を利用しながら、借りる額=今後の負担を少なくし、長期間無理なく支払っていくのが、賢いローンとの付き合い方になります。
物件の値段も見極める
さて、大きな買い物をするときのポイントはもう一つあります。それは、購入するものが適正な価格であるかどうかということ。
自分たちの欲しい物件は高すぎないか?ということもチェックしておきましょう。
誰しも、一般的な金額より無駄に高値になっている商品は購入をためらいます。
しかし、住宅の購入は一生に一度あるかないかの経験ですし、エリアや設備などによって大きく金額が変動します。
自分たちが検討している物件は適正な価格なのか、何を基準に見極めればよいのでしょうか?
その基準の一つに「家賃200倍の法則」というのがあります。
これは、その物件に賃貸として住んだ場合、賃料と比較して、購入したほうがお得かどうかを判断する指標です。
近隣エリアの同じ間取り・同じ築年数の賃貸物件と比較して、そこの物件としては妥当な値段なのかどうかを見極めることができる基準の一つになります。
- 家賃200倍の法則:賃貸の家賃相場から、その物件が適正価格かどうかを見極める指標のこと。この金額が適正な物件価格の基準となるため、それより金額が低ければお得、高ければ場合によっては損と判断できる。
- 計算式:同エリアの家賃相場×200 > 物件価格
※「200倍」という基準値:「もし賃貸物件として貸し出したら、家賃収入の利益が年6%ある」という前提で不動産投資の経験則から導き出されたもの。
参照:マネラボ マイホームか賃貸かを見極める「200倍の法則」とは?
https://moneylab.f-academy.jp/column/education/increase/348/
具体的には、まず似たような物件の家賃を調べます。
「エリア」「最寄り駅」「間取り」「築年数」「駅からの所要時間」など、欲しい物件と似た条件の賃貸物件を探して見ましょう。
そして、そこで出てきた平均の賃料を200倍にしてみるのです。
例えば、下記の例で考えてみましょう。
- まず、賃貸住宅検索サイトなどで同じエリア・同じ間取りで駅から徒歩10分圏内の物件を探す。検索する条件は下記の通り。
- 同じ駅周辺
- 同じ徒歩圏内
- 同じ間取り
- 同じ築年数
- 近隣の毎月の家賃平均を計算する。ここでは仮に15万とします。
- 家賃200倍の法則の公式にしたがって計算する
15万×200=3000万 < 3500万
→基準の3000万より200万高いため、少し高めの物件と判断できる。
もしこの場合、検討している物件が4000万や5000万であれば、妥当な値段とは言えないでしょう。
デザイナーズマンションである・共用設備が充実しているなど、特別な設備があればその分の価値や金額ともいえますが、そうではない場合は購入を見合わせたほうが良いかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
住宅の購入は「一生で一番高い買い物」と言われるように、金額も高く、ローンを組めばお付き合いも長くなるもの。
また、なかなか購入機会があるわけではないため、価格の基準もわかりにくいものです。
それだけに事前に自分たちの収入や今後のライフプランを考え、しっかり情報収集し、慎重に検討しなければなりません。
とはいえ、「一生で一番夢のある買い物」です。
重要なポイントをしっかり押さえ、リスクを回避することで、よりスムーズに夢を実現できるでしょう。