不妊治療にかかる一般的な費用は?助成金や保険についても紹介

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晩婚化に伴い、出産年齢が引き上がるにつれて、不妊治療を行う夫婦の割合も増加しているといわれています。現在の女性の初婚平均年齢は29.4歳で、20年前よりも3年遅くなっています。その分、出産年齢が引き上がるのも当然のことです。

もちろん、妊娠出産は女性だけの問題ではなく、仕事のストレスなどの理由で男性原因での不妊も増えているとされています。

不妊治療を考えたときに心配になるのは、やはり費用のことですよね。不妊じゃないかと悩んでいて病院に相談してみたいけど、費用面が心配でなかなか踏み出せない・・・という人もいることでしょう。

不妊治療にはいくつかの治療法があり、かかる費用はどの治療法を採用するかによってかわってきます。また、高額な治療については公的な助成制度も用意されているのです。

今回は、治療法ごとの平均的な費用や、不妊治療の助成制度について解説していきます。

 

不妊治療をうける人の割合は?

「不妊治療をうける夫婦の割合が増えている」というのはなんとなく聞いたことがある人も多いかもしれません。それでは、具体的にどのくらいの割合で増えているのでしょうか?

日本産婦人科医会の調査によると、健康な夫婦の1割以上が不妊に悩んでいるとされています。

また、不妊は女性の年齢と大きな関連を持っており、加齢とともに不妊率は上昇していきます。不妊率は、女性の年齢が20代前半のときは5%以下ですが、30代後半で30%、40代以上になると64%まで上昇します。

もちろん、不妊は女性だけの問題ではありません。男性因子での不妊も、33%にのぼるとされています。

参考:日本産婦人科医会/不妊の原因と検査

 

また、国立社会保障・人口問題研究所の調査によれば、不妊を心配したり悩んだ経験のある夫婦は35%にのぼるとされています。さらに、実際に不妊治療を受けている、または受けたことのある夫婦は18.2%とのことです。

つまり、3組に1組のカップルが不妊の心配をしたことがあり、不妊治療の経験があるカップルは5.5組に1組いるということです。

思ったよりも不妊に悩む夫婦は多いのだな、という感想を抱かれた方が多いのではないでしょうか。さらに、こちらの調査では、過去の調査に比べて、不妊の治療経験がある夫婦の割合も増加傾向にあるとされています。

晩婚化が進む現代では、不妊治療は一部の夫婦のみの悩みではなく、多くの夫婦が経験する悩みになりつつあるといえるでしょう。不妊の悩みは周りに伝えづらく、ひっそりと不妊治療を受けている人も多い模様です。

参考:国立社会保障・人口問題研究所/夫婦調査の概要

 

 

不妊治療の方法はどんなものがあるの?

それでは、不妊治療について具体的に解説していきましょう。

一口に“不妊”と言っても、原因は様々です。女性の体質にばかり目が向けられがちですが、男性側に原因があるケースもあります。

不妊治療にはいくつかの方法があり、原因や夫婦の希望によって適切な治療法が選択されます。選択する治療法や病院によってかかる費用も異なってきます。

まずは、どのような治療方法があるのかを紹介していきましょう。

 

タイミング法

排卵日を正確に把握することで自然妊娠を目指す方法で、一番最初に行われる治療法になります。おりものの状態や卵胞の状態、ホルモン値などから排卵日を正確に予想し、妊娠しやすいとされる排卵日2日前から排卵日までに夫婦生活を送ることで妊娠を目指します。

6回以上で妊娠しなければ、他の治療法に切り替えられることが多いようです。

 

人工授精

人の手を介して受精を促す方法です。採取した精子の中から動きの良いものを選別し、その精子を妊娠しやすいタイミングで子宮内に注入するものです。「人工」とつくので体外受精と混同されがちですが、プロセスとしては自然妊娠と同様なのです。

タイミング法で妊娠しない場合や、精子に不妊の原因がある場合などに選択されます。

費用の相場としては、1回の受精でだいたい2~3万円程度です。

 

体外受精

取り出した卵子と精子を培養液の中で受精させ、受精卵を子宮に戻す方法です。以前は高度な治療方法とされていましたが、最近ではハードルが下がり、一般的な不妊治療の一つとなりました。一定期間人工授精を行っても妊娠しなかった場合などに実施されます。

体外受精となると費用は格段に高くなり、1回の治療で20~60万円かかるとされています。

 

顕微授精

体外受精と同様、体外で受精卵を作り子宮に戻す方法ですが、受精方法が異なります。顕微授精では、動きが良く正常な形の精子を1つ取り出し、細い針で卵子に注入して受精させます。受精障害などの理由で体外受精が難しい場合にこの方法がとられます。

1回の治療で20~60万円が相場の価格ですが、体外受精よりも少し高く設定されている病院が多いようです。

 

 

一般的な不妊治療の費用は?

妊娠するまで不妊治療を続けた場合、総合でどのくらい費用が必要になるのでしょうか。

不妊治療で必要となる費用は、治療費だけではなく、検査費や治療に至るまでの採卵などにも費用がかかります。

総合的に必要となる費用について、解説していきます。

 

検査にかかる費用

本格的な治療に入る前に、不妊の原因や体質を調べるための検査が必要になります。

不妊治療は月経周期に合わせて行っていくため、最初にその周期を正確に把握する必要があります。検査にも多様ながあり、病院によっては行う検査も異なってきます。

こちらでは、一般的な検査方法とだいたいの費用相場を紹介していきます。

  • 採血検査:2,000~11,000円
  • 子宮排卵造影検査:約7,000円
  • レントゲン検査:約1,000円
  • 超音波検査:2,000~3,000円
  • フーナー試験:約1,000円
  • 性感染症検査:7,000~11,000円
  • 子宮鏡検査:3,000~11,000円

検査の中にも、健康保険が適用になるものとそうでないものがあり、手術を要するかどうかでも変わってきます。検査方法は上記以外にもたくさんあり、どの検査を受けるかは病院の方針や必要性によって変わりますので、参考としてとらえてください。

 

また、検査を受けるのは女性だけではありません。代表的な男性の検査としては、以下のようなものがあります。

  • 精液検査:約5,000円
  • 感染症検査:約6,000円

精液検査は保険適用になる病院とならない病院があり、保険適用の場合はかなり安価に受けることが可能です。

不妊治療に至るまでの検査費用だけで数万円の出費になることは覚悟した方がいいでしょう。

 

治療に必要な費用

次に、実際の治療にかかる費用について解説していきます。

・タイミング法:数千円

病院の指導の下、最も妊娠しやすいタイミングで夫婦生活を営み自然妊娠を目指す方法ですので、最も費用がかからない治療法です。

・人工授精:1回2~3万円

基本的に自然妊娠ですので、こちらも意外と安価に受けることができます。ただし、あくまでも1回の費用です。1回の授精で妊娠するとは限りませんので、複数回治療を受ける場合は、その分費用がかかってきます。

・体外受精・顕微授精:1回20~60万円

体外受精となると、費用が大きく引き上がります。こちらも前述した通り、複数回治療を受ける場合はその分の費用が必要となります。

 

総合的な不妊治療の平均費用は?

検査や治療の具体的な項目をあげてきましたが、不妊治療にかかる費用は単純計算が難しいものです。

なぜなら、治療期間がわからないためです。少し前述した通り、前項で紹介した費用はあくまでも1回の治療費であり、1回の治療で妊娠に至るとは限りません。治療の回数が多くなればなるほど、費用負担は大きくなっていきます。比較的安価な人工授精であれば何度もトライできますが、体外受精を何回も・・・と考えると、頭をかかえる値段になってしまいます。

また、治療によっては卵子や精子を保存・凍結する場合もあります。その場合、保存期間が長くなればなるほどランニングコストがかかることになります。

要するに、不妊治療は治療期間が長くなるほどに費用も大きくなっていくのです。

それでは、総合的な不妊治療の平均値はどのくらいなのでしょうか?

NPO団体Fineの調査によれば、「100万円以上かかった」と答えた人数の割合は55.1%と、半数以上を超える結果となっています。最も多かったのは「100~200万円」で約25%、次いで「10~50万」が約19%です。こちらの調査結果では、治療費だけでなく、遠方の病院まで通うための通院費などが負担となった人がいることもうかがえます。

治療の内容や選ぶ病院、治療期間の長さによって大きな差が出てくるといえます。

参考:NPO法人Fine/不妊治療の経済的負担に関するアンケート Part2

 

 

不妊治療と保険の関係

これだけ高額の治療費が予想されるとなると、気になるのは健康保険が適用となるのかどうか、というところですよね。どのような不妊治療だと健康保険が適用となるのでしょうか。

不妊治療と保険について解決していきます。

 

健康保険は適用外?

健康保険の適用については、治療方法によって異なります。

タイミング法は保険適用となることが多いようですが、より高額な人工授精や体外受精となると、ほぼ保険適用外となります。ただし、内容や病院によってはタイミング法でも適用外となる場合もあるようですので、事前に病院に確認をとるのが賢明でしょう。

治療前の検査についても、内容によって保険適用となるものとそうでないものがあります。例えば、基本的な血液検査やエコー検査、フーナー試験などは保険適用となりますが、子宮排卵桑栄検査や性感染症検査などは適用外のことが多いです。検査だけでも数万円の出費になることがありますので、こちらも事前に病院に確認をとるようにしましょう。

男性の検査ですが、精液検査は病院によって保険適用のところとそうでないところがあります。保険適用であれば1,000円以下で受けられますが、適用外だと5,000円前後かかることが多いです。

 

不妊治療を対象とした民間保険はある?

では、不妊治療の費用を民間の保険に頼ることは可能なのでしょうか?

実は、昨年に日本生命から初めて不妊治療が対象となる保険が誕生しています。

これは、不妊治療だけが対象なる保険というわけではなく、三大疾病を保障する医療保険に、不妊治療サポートと出産祝い金が盛り込まれた内容となっています。

内容をざっくりまとめると、以下の通りです。

・加入対象者:16~40歳の女性

・保障内容:

①三大疾病(がん、心筋梗塞、脳卒中)にかかり死亡した場合に一時金を受け取れる

②特定不妊治療を行う場合、1~6回目まで1回につき5万円、7~12回目まで1回につき10万円、最大90万円が受け取れる

③出産後の祝い金(1人目:10万円、2人目:30万円、3人目50万円)

④満期時に最大200万円の一時金

保険料は月々1万円程度と、使いやすい内容となっています。

ただし、加入の際の注意点として以下の2点があります。

・不妊治療の保障は加入後2年経過してから受け取ることができる。

・加入後1年以内の出産の祝い金は出ない。

つまり、現在不妊治療中の方が加入した場合、加入から2年たたないと保障金がもらえないということです。不妊治療中の方は注意が必要ですね。

詳しい保障内容や要項については、商品ページを参考にしてください。

参考:日本生命/出産サポート給付金付3大疾病保障保険 ChouChou!

 

 

助成金はうけられる?

これだけ高額な出費が予想されるとなると、しり込みしてしまう人も多いかもしれません。特に懸念されるのは、治療費が高額になる体外受精と顕微授精です。高額なうえに健康保険も適用外であるため、治療が長引くにつれて、経済的な理由から治療を断念する人も少なくありません。

そのため、高額な不妊治療の費用を補助するために「特定不妊治療助成事業」という、高額な不妊治療の費用を補助する制度が用意されています。

特定不妊治療とは、体外受精・顕微授精のことを指しています。つまり、健康保険のきかない体外受精や顕微授精を行う場合に申請することで、助成金を受け取ることができる制度です。国の方針に従って、各地方自治体によって運営されています。

特定不妊治療を1回うけるにつき、15万円まで助成を受け取ることができます。このうち、最初の治療については30万円までが限度額となります。

また、助成回数には上限があり、治療開始時点での妻の年齢が39歳以下の場合は6回まで、40歳以上で3回までとなっています。

こちらの助成を申請するには、以下の要件を満たしている必要があります。

・特定不妊治療以外の方法では妊娠の可能性が極めて低いと医師の診断を受けたこと

・指定医療機関で特定不妊治療を受けたこと

・申請日前年までの夫婦の合算所得額が730万円未満であること

詳しい内容については、厚生労働省のページでも紹介されています。

参考:厚生労働省/不妊に悩む夫婦への支援について

 

ただし、運営は各自治体が行っており、具体的な助成内容は自治体によって異なります。申請を検討している人は、お住いの自治体の該当ページを参考にしてください。

 

また、基本的には体外受精や顕微授精を対象とする制度ですが、自治体によっては人工授精などの一般不妊治療や検査費も対象となるところがあります。

例えば、東京都では昨年から一般不妊治療の助成事業を開始しており、保険医療機関にて行った「不妊検査」及び「一般不妊治療」に要した費用について、5万円を上限に助成をうけることができます。

ただし、検査開始時に法律的な婚姻関係があることや、妻の年齢が35歳未満であることなどの条件があります。助成回数は夫婦1組につき、1回のみです。

一般不妊治療だからとあきらめず、お住いの自治体の制度を確認することをおすすめします。

参考:東京都/不妊検査等助成事業を開始

 

 

まとめ

不妊治療にかかる費用について解説してきました。

最後に、簡単に要点をまとめてみましょう。

 

・不妊治療を行う夫婦の半数以上が、総額で100万円以上かかったと回答している。

・高額な治療法である体外受精や顕微授精は、基本的に健康保険の適用外となる。

・「特定不妊治療助成事業」を利用することで、各自治体から助成金が受け取ることができる。

・自治体によっては、不妊検査や一般不妊治療についても助成している。

 

不妊治療は、期間が長くなるほどに費用がかさんでいきます。

子供は欲しいから不妊治療に臨みたいけど、費用はできるだけ抑えたい・・・と考えている人は、できるだけ早く治療を開始することをおすすめします。年齢があがるにつれて不妊率は上昇していきますし、自治体によっては助成対象に年齢制限があることもあります。

不妊治療に踏み出すことはなかなか勇気のいる決断ですが、まずはお住いの自治体の補助内容を調べてみる所から始めてみてはいかがでしょうか。

妊娠を希望する時期や費用面のことなど、ご夫婦でよく話し合ってみてください。

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