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FX取引において、ニューヨーク時間と並ぶ「ロンドン時間」は世界中から多くのトレーダーを集め、毎日活発な取引が行われております。
FXで儲けるならニューヨークかロンドンといっても過言ではないくらいその存在感が大きい市場です。
勝ちやすいロンドン時間ではありますが、その反面大きな痛手を被る可能性が高いのも事実です。
また、FX初心者の方でしたらロンドン時間というものをFXの基本的事項として学び、今後のトレードに活かしていくことが大切です。
そこでこれから、FXにおけるロンドン時間の特徴や勝つためのやり方などをお話ししていきます。
ロンドン時間の基本
ロンドン時間とは、世界3大市場の1つとして「ニューヨーク時間」、「東京時間」とともに世界で広く知られる金融・取引の時間帯(市場)のことです。
開かれている時間は日本時間の17:00(「*冬時間」では18:00~)から翌1:00くらいまでの間となっています。
*この時間についてですが、ヨーロッパではサマータイム制(夏時間)により市場開始などの時刻に違いがあり、以下本ページでは「夏時間」のものを表記します。
「夏時間と冬時間について」
- 夏時間・・・3月の最終日曜日~10月の最終日曜日
- 冬時間・・・それ以外の時期
- 時間差・・・夏時間は冬時間より1時間早い
実は、ロンドン市場より1時間早く他のヨーロッパ諸国の市場(ヨーロッパ市場、欧州市場)が開かれます。
ロンドン時間(市場)もヨーロッパ市場の中の1つと言えますが、ロンドン市場単独でその取引量が圧倒的に多く、基本的にはロンドン時間やその市場の特徴をメインで理解すればヨーロッパにおけるFXの特徴を把握することができます。
「国別のFX取引高」 *単位は1,000 = 1兆ドル
国 | 2010年 | 2013年 | 2016年 |
---|---|---|---|
イギリス | 1,854 | 2,726 | 2,406 |
アメリカ | 904 | 1,263 | 1,272 |
日本 | 312 | 374 | 399 |
出典:BIS(国際決済銀行「国別外国為替取引高、1995-2016」)
ロンドン時間の特徴
取引量世界一と激しい値動き
ロンドン時間の大きな特徴としては、「取引量が多い」ことと、その結果による「値動きの激しさ」が挙げられます。
市場開始直後から取引が活発に行われ、それまでの東京時間の静かな様子がガラっと変わります。
取引高の多さは取引に関わる海外の機関投資家やヘッジファンドなどの数が多いことでもあり、それらが様々な戦略やアプローチを仕掛け、だまし合いをも含んだトレード合戦が展開されます。
レンジ相場からの転換
東京時間の穏やかな相場から、多数の相場参加者の出現により大きなトレンドの発生に至ることが珍しくありません。それもやはり取引量の高さゆえに起こる出来事です。
各種トレンドラインなどを突き抜け、大きく勝てる見込みが高まりますが、その分大きな損失を受ける危険性もあり、慎重なやり方が大切なこととなってきます。
東京時間を覆す流れ
また、例えば市場開始前までに米ドル/円が前日比+30pipsだったものが、ロンドン時間(またはその前のヨーロッパ時間)から逆行が始まり、前日比がほぼトントンになってしまう展開もあります。
東京時間と同じようにトレードを行っていますと、このような反転現象と対峙した場合、せっかくの含み益を取り逃してしまったり、誤ったポジションを新規に建ててしまうことにもつながります。
FXにおけるロンドン時間の主なイベント
ECB政策金利発表
「概要」
FXにおいては経済指標に属するイベントです。
ECBとは、ユーロ通貨圏の19カ国を管轄する「欧州中央銀行」のこと(略称)で、2週間ごとに日本時間20:45からその会合が行われます。また21:30にはECB総裁の記者発表が行われる場合があります。
この会合によってユーロ圏の金融政策(主に政策金利)が決定されます。
FXにおいては、次のような項目が相場に大きな影響を与える可能性があります。
- 政策金利の数値
- 量的緩和政策(QE)
- ECB総裁の記者会見
「政策金利の数値」
欧州中央銀行が一般銀行に資金を貸し出す際の金利(利率)がFXでは大きく取り上げられます。2018年9月現在は0.00%となっています。
「量的金融緩和政策(QE)」
政策金利の調整の他に景気上昇を図る狙いで、中央銀行が一般の金融機関が発行している国債などを購入し、資金を広く市中に流し込むものです。「QE」とも呼ばれています。
また「テーパリング」(量的金融緩和の段階的な縮小)もFXの経済ニュースで時々見かける重要な用語となっています。
「ECB総裁の記者会見」
ロンドン時間で非常に注目度が高いイベントです。
ECB総裁(ドラギ総裁、2018年現在)による今後の景気への見通しや先ほどの量的金融緩和などの金融政策が語られます。
会見内容を受けて数十pips動くことも珍しくありません。トレードのリスクが非常に高まる場面です。
出典:REUTERS
(ドラギ総裁)
BOE政策金利発表
イングランド銀行(BOE)が年8回行っている会合です。政策金利の発表や「資産買取りプログラム」の運用方針等がFXにおける取引のポイントとなっています。2018年9月時点での政策金利は0.75%です。
イギリスの金融に関する話題ということで「英ポンド/円」の動きに注意することとなります。
経済ニュースではこの会合組織である英中銀金融政策委員会(MPC)メンバーの発言が時折提供されてきますが、内容が抽象的で分かりにくいところがあり(MPCに限ったものではありませんが)、安易な判断を下さないことが賢明です。
FXの取引画面で見られる経済指標カレンダーで日程を確認し、事前にポジションを整理したり相場変動などが落ち着いてから戦略を練り直すやり方が安全です。
ロンドンフィックス
日本時間24時のイベントで、これは「仲値」という企業向けの基準為替レートが決まるものです。
ロンドンフィックスでは、世界中から実需筋や投資ファンドなどが基準レートを元に取引の思惑をぶつけ合い、またこの時間はニューヨーク時間とも重なり非常に激しい取引が展開されます。
24時前から約1時間程度が注意すべき時間帯ですが、ひととおり取引が進むと急に静かになったりする面もあります。
欧州株式市場の動き
メジャーな株式市場をおさえる
ヨーロッパ各国にある株式市場の動向によってもFX相場が変化していくことがあります。ユーロ圏内には2018年現在19の国がありますが、その中でFXで重要となる株式市場を取り上げてみます。
「フランクフルト証券取引所」
ドイツにある取引所で、日経平均やニューヨークダウのような主要株価30種の趨勢を表す「DAX指数」の変動がロンドン時間のFXに影響を与えます。
ドイツは経済規模やその成長率、人口などでユーロ圏における中心的な国であり、周辺諸国や世界にも大きな影響力を持ちます。
出典:NHK
「ロンドン証券取引所」
2019年3月にEUを離脱するとされているイギリス・ロンドンにある証券取引所です。
冒頭の方でイギリスのFX取引高の高さをご紹介しましたが、株式市場においてもやはり日々活発な取引がなされております。
当取引所においては「FTSE100」と呼ばれる上位株銘柄100種類の指数の動向がFX攻略のポイントとなっております。
FXにおける取り組み方
ドイツのDAX指数とイギリスのFTSE100の動きに応じてFXの通貨ペアも変動していきます。
一般的には、こういった株価の状況が良好であれば通貨の方も上昇し、その逆もしかりといった単純なものです。アメリカのニューヨークダウの結果によって日本でもFXの相場が影響されるのと同じ流れとなっています。
ただ、リアルタイムでこの動きにトレードを合わせるのは簡単ではなく、最初のうちは経済ニュース等で流れる情報も参考にしながらリスク回避的に活用していくのが無難なやり方です。
出典:Investing.com
夏時間22~1時にはNY時間とかぶりFXが激しくなる
ロンドン時間とニューヨーク時間が日本時間の22~1頃に重なります。
他の時間帯の感覚でトレードを行っていますと、損切りの頻度が無駄に多くなったり、本来獲得できた利益を取り逃すことにもつながります。
この辺りのお話しは、次の段落で詳しく紹介していきます。
ロンドン時間におけるFXのやり方は?
ロンドン時間全般
「基本事項」
ロンドン時間開始直後(17:00~)が値動きがよく発生するタイミングです。また、1時間前にはヨーロッパ各国の市場もスタートしており、こちらもやはり開始直後が勝利を狙うチャンスとなっています。
ロンドン時間開始から2時間くらいがトレンドなどまとまった値幅を狙える時間帯となり、それ以降は取引もだんだんと緩やかなものとなってきます。
次の取引のチャンスは、夏時間では22:00からのニューヨーク時間となります。
「経済指標に注意する」
時期によってはECB・金融政策決定会合に絡んだ発表が20:45と21:30に発生します。
これによる相場変動や大きなトレンドの発生を期待することも可能ですが、発表後の値動きは非常に激しいこともあるため、FXのやり方に十分留意する形でトレードに臨むか、ポジションは作らないようにするのが賢明です。
「トレードのスタイル」
ロンドン時間やその前のヨーロッパ時間においては、それまでの東京時間より参加トレーダーの数も増え値動きが大きくなりやすくなることから、利益確定や損切りの幅を広めに設定するやり方が基本となります。
「相場状況の激しさの原因を考える」
新しいトレンドの発生なのか、イベントに起因する突発的な値動きの激しさなのかどうかを判断することが重要です。
取引参加者や取引量が多いロンドン時間ですので、見た目では同じ大きなトレンドであっても、その発生原因の違いによって、利益確定を急いだ方が得なのか、しばらくポジションを保持してた方が得なのか、ポジションの扱い方が変わってくるのです。
もちろん安全性やルールを重視して、常に確固とした利確幅を守ることも大切ですが、デイトレードやスイングを行っている場合、数十pips程度の含み益があってもそれは必ずしも成功とは言えず、ロンドン時間特有の流動性の高さによる評価益かもしれません。
従って、チャートを注視するのはもちろん、エントリー後に何かイベントや経済指標などの発生があったか、もしくはテクニカル分析的に長期ホールドが妥当なやり方であるかなどを判断する必要が出てきます。
このことを意識すべき事柄を以下に上げてみます。
- 経済指標への反応と思われる値動き
- 特定の国の株式市場の動向
- ロンドンフィックスによる取引の激しさ
- ニューヨーク時間と重なる22:00から数時間以内 など
上記項目は意外とその値動きが限定的になる場合がありえる例ですが、損失が発生していれば、理由のいかんを問わず損切りを行うのが鉄則です。
相場の大きな視点からの戦略
ロンドン時間であっても、月足や週足など長期チャートの状態や、その時々でホットとなっているニュースに沿った形で相場が進行していく場合があります。
ヨーロッパの投資家たちもその話題性の強さには逆らえず、順当なトレードを行ってくるのです。
それとは逆に、「ヨーロッパ市場特有の逆行的なやり方」を仕掛けてくるのもFXではよく知られた話です。
「ロンドン時間の特徴」でお話しした通り、それまでの流れを変えるトレンドが往々にして見られます。
だいたいいつも米ドル/円であれば翌日までに100pipsも動くものではありません。どこかで調整が起こると考え、ロンドン時間をそのタイミングとして利益確定などを視野に入れるのが大切です。
難しい金融用語などに注意する
取引量の多さやヨーロッパという対象国が複数ある性質、様々な仕組みや出来事など、ニューヨーク時間とともにロンドン時間に関するFXや金融関係の専門用語が経済ニュースなどで頻繁に登場してきます。
先ほどのECBにおいては量的緩和政策、テーパリングといった用語や、様々な経済指標、相場への大きな発言力をもつ代表的な要人達の名前など、実に多くの気難しい単語が存在しています。
「ロンドン時間におけるFX・金融に関する用語や重要な項目(例)」
- ロンドンフィックス・・・0時に発表される企業向け為替レート(仲値)
- ECB・・・欧州中央銀行
- BOE 資産買取りプログラム・・・イングランド銀行(イギリス)の量的緩和政策
- ブレグジット・・・イギリスのEUからの離脱
- ユーロ・ストックス50指数・・・ユーロ圏上位11カ国の上位株価指数
- CPI・速報値・・・消費者物価指数の速報データ
- KOF先行指数・・・スイスで経済予測に使われる景況感調査
- 10年国債金利の動向・・・特にドイツ、イギリスなどの先進国のもの
- GDP(国内総生産)の結果発表、雇用統計、株式市場の動向 など
このような用語の豊富さが逆に相場状況の理解を難しくさせることにもなりますが、これらはファンダメンタル的な要素として、テクニカル分析を補助する使い方が、特に初心者の方には最適です。
まとめ
ロンドン時間につきましては、何といっても値動きの大きさからトレードがしやすいのがポイントです。機関投資家から一般のトレーダーまで、そのダイナミックな様が利益獲得やFXの醍醐味を味わうのに適しています。
ロンドン時間におけるポイントは以下の通りです。
- ロンドン時間はFXの取引量が多く値動きが激しい
- ロンドン時間特有のイベント(経済指標やロンドンフィクスなど)を覚える
- トレードにおいては東京時間の結果に従わない流れを考慮する
- 市場開始(17時、夏時間)直後が値動きも目立ちトレードに向いた時間帯
- 利確・損切り幅を広めにするのが基本
- 値動きの荒さの原因を考え最適なやり方を考える
- 多くの専門用語に慣れる
初心者の方には少々大変なロンドン時間ですが、投資の世界ではプロとアマチュアが同じ土俵上で戦います。これもFXの現実であると認識し正しいやり方をマスターしていくのが大切です。
*ニューヨーク時間に関する記事は以下をご覧になってください。
*東京時間のことを知りたい方こちらが参考になります。